編集長コラム
障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ
2010.11.24 [伊藤数子「障がい者スポーツの現場から」]
第2回 「一本」を追求した日本古来の柔道
"スポーツの秋"ということで、国内外ではさまざまなスポーツの大会やイベントが行なわれていますね。中国・広州で開催されているアジア競技大会では、日本人選手の活躍が連日のように報道されています。来月には同会場でアジアパラ競技大会が行なわれるわけですが、その代表にも選ばれている選手たちが日本一の座をかけて今月7日に講道館で行なわれたのが、全日本視覚障害者柔道大会です。アトランタ、シドニー、アテネとパラリンピックで3連覇し、北京では銀メダルを獲得した66キロ級の藤本聰選手を始め、大会には全国からトップ選手が集結し、熱戦が繰り広げられました。
視覚障害者柔道は必ず組んだ状態から始めるという点以外は、一般の柔道とルールは全く同じです。ですから、もちろんクラス分けのカテゴリーは体重ということになります。障害者スポーツでは障害の重度によってクラス分けがされていますが、唯一視覚障害者柔道だけは関係なく行なわれています。つまり、全盲の選手も弱視の選手も、そして視覚と聴覚の両方に障害がある選手も、同じ土俵で戦うのです。これが視覚障害者柔道の特徴でもあります。
今回、私は初めて視覚障害者柔道を生観戦したのですが、みるみるうちにこの競技の魅力に引き込まれてしまいました。まず感じたのは、組んだ状態で始めるその姿が柔道に対して真摯的であり、非常に美しいということです。一般の柔道では、相手に組ませないようにと、離れた状態での攻防戦が繰り広げられますが、視覚障害者柔道では堂々と相手に組ませ、同じ条件の下で試合が始まります。これが、何とも見ていて惚れ惚れとしてしまうのです。
組んだ状態で試合が始まりますから、どんどん技がかけられていきます。ですから、選手は一瞬たりとも気を抜くことはできないのです。そして、観ている側も息つく暇などありません。なぜなら「はじめ!」の合図から、わずか数秒で「一本!」ということも少なくないからです。この「一本!」という声が会場に響きわたるあの瞬間は、何とも言葉に言い表わせないほどの快感を味わうことができます。勝った選手の喜びと興奮、そして負けた選手にも清々しさが感じられました。
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