編集長コラム
障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ
2011.08.02 [伊藤数子「障がい者スポーツの現場から」]
第10回 義足ランナー・オスカーよ、世界の舞台を駆け抜けろ!
今月19日、イタリアから嬉しいニュースが飛び込んできました。パラリンピックで4個の金メダルを獲得した両足義足ランナー、オスカー・ピストリウス(南アフリカ)が世界陸上選手権の出場資格を得たというものです。イタリアで行なわれた陸上大会に出場したオスカーは、男子400メートルで自己記録を0秒54上回る45秒07をマーク。見事、参加標準記録を突破しました。今後、南アフリカ代表に入れば、8月27日から韓国・大邱で開催される世界選手権に出場することができます。実現すれば、世界のスポーツの歴史が変わる、それくらい大きな出来事です。
オスカーは2008年の北京オリンピックの出場を目指し、07年に国際陸上連盟に出場資格を求めましたが、国際陸連は義足が「競技力向上を手助けする人工措置」を禁じる規定に抵触するとして認めませんでした。しかしその後、スポーツ仲裁裁判所の裁定により、北京オリンピック出場が可能とされたのです。残念ながらオスカーは参加標準記録を突破できず、北京への出場は実現しなかったのですが、それでも「義足ランナーがオリンピックに出場する資格がある」と認められたのですから、まさに時代が動いたと言っても過言ではないでしょう。そのオスカーが再びオリンピックへの道を切り拓こうとしているのです。
とはいえ、オスカーがオリンピックに出場することには賛否両論あります。その主たる理由は2つ。まず、競技用義足はカーボンでつくられており、反発力を受けていること。もうひとつは、義足であるために疲労の原因となる乳酸がたまらず、持久力という点で有利であるということです。短距離の中で最も過酷だと言われる400メートルであれば、なおさらその有利性は高い。国際陸連が義足ランナーの出場を認めなかったのは、こうした理由からなのです。
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