編集長コラム
障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ
2012.07.09 [伊藤数子「障がい者スポーツの現場から」]
第21回 「モバチュウ」の意義を伝えてくれた一本の電話
パラリンピックは世界最高峰の競技大会ですが、実はわが国には、「ジャパンパラ」という国内最高峰の大会があります。日本障害者スポーツ協会日本パラリンピック委員会(JPC)と各競技団体が主催する大会で、現在は陸上、水泳、アーチェリー、スキーの4競技で行われています。これまでSTANDでは、ジャパンパラのいくつかの大会のインターネット生中継(モバチュウ)を行ってきました。そこで今回は、2009年7月20日、大阪で行なわれた「ジャパンパラ水泳競技大会」での出来事についてお話します。
大会の数日後、会社に一本の電話がありました。50M自由形に出場した愛知県在住(当時)の竹内 那苗(たけうち ななえ)選手の母親、香世子さんからでした。
「中継していただき、本当にありがとうございました! 自宅に戻ってから、パソコンで録画を観ました。まるで私の娘がオリンピック選手みたいに見えて、感動してしまいました。こうして中継をしていただくと、障害者の大会ではなく、一流スポーツの大会のようですね」
そう元気にお話される香世子さんの声に、私も嬉しさがこみ上げてきました。そして、香世子さんはこう続けました。
「あの映像をビデオにして譲っていただけないでしょうか」
当時、竹内選手が出場したレースには、彼女とパラリンピック出場経験のある男子の2人のみでした。性別の違いもあり、2人のタイム差はかなり大きく、竹内選手は一人取り残された状態になったのです。「モバチュウ」では、男子選手がゴール後も竹内選手を映し続けました。それをパソコンで見た香世子さんには、まるで竹内選手の独占中継のように思えたのです。それで、なんとか保存したいと思い、思い切って問い合わせをしたというのです。私は「娘がオリンピック選手のようだった」という言葉に胸が詰まる思いでした。
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