編集長コラム
障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ
2012.10.02 [伊藤数子「障がい者スポーツの現場から」]
第24回 ニッポンよ、今こそ行動すべし! ~ロンドンパラリンピックからの学び~
9日、12日間に渡って熱戦が繰り広げられたロンドンパラリンピックの幕が閉じました。今回、日本は金5、銀5、銅6の計16個のメダルを獲得。「北京以上」という目標は達成することはできませんでしたが、大健闘と言ってもいいのではないでしょうか。パラリンピック全体を見ても、史上最多のチケット販売数を記録するなど、これまで以上の盛り上がりを見せました。成熟社会におけるスポーツの存在というものを見せてもらったような気がしています。
観客とボランティアがもたらすもの
私がロンドンパラリンピックで、まず驚いたのは観客の多さです。特に陸上と競泳の会場は、連日満員。予選でさえもチケットが完売しているという状況でした。そして、さすがは"ジェントルマン"の国、英国。応援のマナーもとても気持ちのいいものでした。地元の選手にだけでなく、素晴らしいプレーや記録そして試合後やセレモニーでは、どの国のチームや選手に対しても惜しみない称賛の拍手が送られていたのです。また、レースが始まる合図の笛などが鳴ると、ピタッと歓声が鳴りやむのです。いつまでもザワザワしているようなことは、ほとんどありませんでした。
こうした英国のフェアで温かく、そして紳士的な応援を見ていて、私は改めてスポーツの素晴らしさを見せてもらったような気がしました。勝負の世界とはいえ、結果を超越したところにこそ、スポーツの意義があると改めて感じたのです。見ている私でさえも気持ちがよかったわけですから、選手たちにとっては、これ以上ない、素晴らしい舞台での試合になったのではないでしょうか。
また、ボランティアの人たちの言動にも感動を覚えました。各試合会場では、通路や席を誘導するボランティアが、会場の内外にたくさんいました。お揃いのユニホームを着た彼らは「ゲームメーカー」と呼ばれています。大会がスムーズに運営されるよう、そして観客が楽しめるようにするために手伝いをしてくれているのです。彼(女)ら自身、その名の通り、単なるボランティアではなく、主催者と共に試合、あるいは大会をつくっているという誇りを持っているのです。
今大会の成功は、主催者や選手はもちろんのこと、フェアな応援で気持ちのいい雰囲気をつくった観客と、紳士的な対応で運営を手伝ったゲームメーカーがいたからこそに他なりません。大会は、運営組織が準備して、選手がプレーして、観客が観る、という単純な組み合わせによるものではなく、お互いに影響し合い、呼応し合ってつくりあげていくのだと実感しました。
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