編集長コラム
障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ
2012.12.06 [伊藤数子「障がい者スポーツの現場から」]
第26回 障害者雇用にも及ぶロンドンパラリンピックの影響
大盛況に終わったロンドンパラリンピックから、もうすぐ3カ月が経とうとしています。これまで日本ではパラリンピックについての報道が少なかったこともあり、一般の人たちがパラリンピックを見る、知る機会は限られたものでした。しかし、近年になって少しずつパラリンピックの認知が進んできています。ロンドンではNHKだけでなくスカパーでも毎日放映され、日本人選手たちの活躍を目にする機会が増えました。私自身、スポーツや福祉に全く関係のない人たちからもパラリンピックの話題がのぼって驚いたことは1度や2度ではありませんでした。そして3カ月経った今、改めて日本におけるパラリンピックへの注目が集まってきていることを実感しているのです。
コミュニケーションをテーマに事業展開している、私たち株式会社パステルラボでは、障害者の就職サポートも行なっています。NPO法人STANDとの連携もあり、障害者スポーツに関わる人たちの就職のお手伝いにも注力しています。これまでは企業側からの依頼は少なく、障害者側からの就職相談ということの方が大きな割合を占めていました。ところが、その割合が今、大きく変わってきているのです。
「パラリンピック選手を社員と迎え入れたいので、紹介してもらえませんか?」
ロンドンパラリンピック以降、そんなお話をいただくことが増えたのです。
現役を引退した後も社員として働いてもらいたいという終身雇用型や、現役選手の活動を支えたいというスポンサード型など、雇用形態はさまざまです。会社の戦力としての雇用、社員の応援の対象としてのアスリート雇用など、選手と企業の関係性も、お互いがよく話し合って、独自の道を切り拓いています。いずれにしても、これは、障害者スポーツ選手に企業の活力としての存在価値を見出しているということの証です。
先日、依頼を受けたのは若い女性社員の多い企業でした。その企業の幹部の方がNPO法人STANDが運営しているウェブサイト「挑戦者たち」を見て連絡をくださいました。求めていたのは「パラリンピックを目指している女性アスリート」でした。
「私たちの会社は扱っている商品も若い女性向きのもので、実際に働いている社員も女性がほとんどです。ですから、元気のいい女性アスリートなら社員が共感しやすい。会社としての活力にもなってくれるだろうと。所属選手を応援することで、社員のチームワークが高まり、雇用している他の障害者にとっても高い意識が生まれると期待しています」
これが依頼の理由でした。この話を聞いて、「障害者アスリートの存在価値が高まってきたなぁ」と思わずにはいられませんでした。
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