編集長コラム

障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ

第31回 「できない」と思ったことが「できた」ときに得られるもの   ~キッズチャレンジプロジェクト~

写真:笑顔がはじける子どもたち 3月31日、私たちNPO法人STANDが主催する「キッズチャレンジプロジェクト」では、障害者スキー体験会を行ないました。参加したのは小学2~5年の8人。その中には身体に障害をもち、ふだん車椅子を使用している子どもたち4人がおり、チェアスキーにチャレンジしたのです。私はそこでまた、スポーツの力を感じることできました。

「嫌だよぉ。僕、やりたくない......」
 午前9時、障害者スキースクール「NPO法人ネージュ」の協力のもと、チェアスキーの体験会が始まりました。すると、ある一人の男の子が泣き出してしまいました。ふと他の子を見ると、いつもは元気いっぱいの子が、口を真一文字にして、緊張のあまりカチコチになっています。見るのも触れるのも初めてのチェアスキーに、不安を感じていたのでしょう。そんな子どもたちの様子に、私も一抹の不安を覚えました。
「大丈夫かな。子どもたちは楽しんでくれるかな」

 しかし、それは杞憂に終わりました。1時間もすると、子どもたちのはしゃぎ声がスキー場に響くようになっていったのです。その時、私はある人の言葉を思い出しました。
「大丈夫ですよ。最初は緊張したり、怖がったりしていても、最後には必ずみんな笑顔で『また滑りたい!』って言いますから」
 今回の企画を相談しに行った際、私にそう言ってくれたのは「ネージュ」の理事長・稲治大介さんでした。

 見ると、子どもたちは2台しかないチェアスキーの取り合いをしています。はじめは、恐る恐る乗っていたのに......。あまりの変貌に、私は思わず笑ってしまいました。それほど、実に微笑ましい光景だったのです。


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伊藤 数子(いとう かずこ)

挑戦者たち編集長
/NPO法人STAND代表理事

新潟県生まれ。1991年に車いす陸上を観戦したことがきっかけとなり、障害者スポーツの振興に携わるようになる。未来に向けて次代の選手・ファンを拡げていくために、障害者スポーツのスポーツとしてのおもしろさを伝えるウェブサイト「挑戦者たち」、障害者スポーツ競技大会のインターネットライブ中継「モバチュウ」、障害者スポーツ体験会などの事業を企業・団体と協働で展開している。2012年ロンドンパラリンピックでは日本選手たちの挑戦を伝えるウェブサイト「The Road to London」を開幕1年前に開設した。著書に「ようこそ、障害者スポーツへ -パラリンピックを目指すアスリートたち-」(廣済堂出版)など。

ロンドン2012パラリンピック 日本選手たちの挑戦 「The Road to London」

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