編集長コラム

障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ

第49回 アジアパラ競技大会からの教訓

アジアパラ競技大会会場 今月行われた韓国・仁川で開催されたアジアパラ競技大会に行ってきました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、今回は、大会の運営について着目してみます。この大会では、各競技会場によって、運営の仕方、大会スタッフやボランティアスタッフの様子に違いがありました。「アジア最高峰の競技大会」という競技会場もあれば、「町内会の運動会」のような、アットホームな場面もありました。

 ひとつの大会に存在する複数の目的

 初日に訪れたメインスタジアムには、聖火が灯っていました。そこには「アジア最高峰の競技大会」としての誇りが映し出されていました。そのメインスタジアムで行われていた陸上競技の運営は、まさに競技大会。大会スタッフやボランティアスタッフがきびきびと行動し、選手たちのサポートをしていたのです。まさに「アジアのトップを競う国際大会」という雰囲気が醸し出されていて、いい緊張感がそこにはありました。その緊張感こそが、会場全体の雰囲気をつくり出し、最高のパフォーマンスを生み出す要因のひとつになる。改めてそう感じました。

 一方ある競技会場に行くと、その雰囲気は一転しました。各国の代表選手たちがプレーしているコートと同じフロアの端で、ボランティアスタッフが和気藹々とダンボールからお弁当を出して配っているのです。これはまさに「町内運動会」。そこに競技大会という雰囲気はなく、仲良くスポーツを楽しむ会が行われているといった感じを受けました。


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伊藤 数子(いとう かずこ)

挑戦者たち編集長
/NPO法人STAND代表理事

新潟県生まれ。1991年に車いす陸上を観戦したことがきっかけとなり、障害者スポーツの振興に携わるようになる。未来に向けて次代の選手・ファンを拡げていくために、障害者スポーツのスポーツとしてのおもしろさを伝えるウェブサイト「挑戦者たち」、障害者スポーツ競技大会のインターネットライブ中継「モバチュウ」、障害者スポーツ体験会などの事業を企業・団体と協働で展開している。2012年ロンドンパラリンピックでは日本選手たちの挑戦を伝えるウェブサイト「The Road to London」を開幕1年前に開設した。著書に「ようこそ、障害者スポーツへ -パラリンピックを目指すアスリートたち-」(廣済堂出版)など。

ロンドン2012パラリンピック 日本選手たちの挑戦 「The Road to London」

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