編集長コラム
障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ
2015.08.03 [伊藤数子「パラスポーツの現場から」]
第58回 競技場のユニバーサルデザイン
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に、パラスポーツの認知度アップに加え「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」という言葉がよく聞かれるようになりました。似たような場面で使用されていますが、2つの言葉は意味が異なります。
「バリアフリー」は、障がい者、高齢者等の社会的弱者が、生活の支障となる物理的な障害や精神的な障壁を取り除くための施策を指す用語で、元々、バリアがあるものを取り除く、フリーにするという意味です。例えば、建物の段差を取り除くことなどを示しており、階段の入口があった場合、それをスロープにする、などがあります。
一方で「ユニバーサルデザイン」とは、米ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス教授が提唱したものです。「できるだけ多くの人が利用可能であるようなデザインにすること」が基本コンセプト。デザイン対象を障がい者に限定していない点が、「バリアフリー」とは異なり、全ての人のためのデザインを指しています。たとえば、建てる前から入り口をスロープで設計することです。スロープは車いす使用者だけのためではなく、歩く人もつかえるものです。特別なことをするというよりは、様々な人にとって、便利で使いやすい設計であると言えます。
大分県別府市に飲食店を訪れた時のことです。入口から段差はなく、ひとつひとつの席の間隔は車椅子でも入れるように広くなっていました。別府市は障がい者が働き、生活する施設「太陽の家」のある町ですから、私は"流石、障がいのある人たちに配慮のある町だな"と思い、そのことを伝えると、お店の方はこう答えました。
「違うんですよ。地域には車椅子の人たちがたくさんいるのだから、その人たちにお客さんとして来てもらわないと損じゃないですか。誰でも入ってきてもらえるように、商売のため、売り上げのためにやっているんですよ」
いろんな人がいることを前提とした考え方で、"これこそがユニバーサルデザインなんだなぁ"と納得、感動しました。
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