編集長コラム
障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ
2017.06.01 [伊藤数子「パラスポーツの現場から」]
第80回 「ムカデじゃないから、なんとかなるよ」スポーツ義足の第一人者、臼井さん
義肢装具士の臼井二美男さん(財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター所属)と久しぶりにゆっくり話をする機会がありました。ラジオ番組「みんなのスポーツ」(*注1)にゲスト出演をお願いしたときのことです。昨年上梓された「転んでも、大丈夫 ぼくが義足を作る理由」(ポプラ社)が今年の小学校高学年の課題図書になったことなど、たっぷりとお話を伺いました。
私が臼井さんと出会ったのはパラスポーツの取材を始めた2008年ころです。陸上の大会に行くと必ず臼井さんの姿を見かけました。義足の選手に寄り添い、ときには義足の調整をして選手と話し込んでいました。臼井さんは選手やスタッフとにぎやかに笑いながら、いつも輪の中心にいました。
「どこのどなたなんだろう」と、思い切って話しかけてみると、とても気さくに話していただきました。「裏方だから」が口癖の臼井さんですが、スポーツ義足の第一人者で日本で初めてスポーツ義足を作った方だということも後で知りました。
34年前、臼井さんは義足技師の見習いから始めました。義足をつけた人に臼井さんは「走ってみたら」と勧めていたそうです。義足になると誰もが不安になります。「転ぶかもしれない」「歩き方が変なのでは?」「座ったら立つのが大変?」など。でも、とにかく走れるようになれば、歩くことも立ち上がることもできて、義足で過ごす日常の不安が少なくなる。これが臼井さんの考えでした。初めて走ったとき100%の人が涙をこぼすそうです。「こういう世界があるんだ」と。
特に子供たちはその傾向が顕著だと臼井さんは言います。障がいがあることで引きこもったり、人と接触しなくなったりする子も少なくないそうです。でもスポーツを始めるとがらりと変わります。自然と外に出るようになり、友達ができ、性格も明るくなる。とにかくいいことがいっぱいある、と臼井さんは考えています。
*注1)「みんなのスポーツ」は筆者がパーソナリティを務めるラジオ番組。6局ネット(新潟放送ラジオ、ラジオ大阪、大分放送ラジオ、茨城放送ラジオ、栃木放送ラジオ、山口放送ラジオ)で毎週放送中。
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