編集長コラム

障害者スポーツのおもしろさを求め、現場へ

第82回 すべての人が好きなスポーツを観に行く社会へ

写真:スーパーラグビーの運営を支えたボランティアスタッフ ラグビーの国際リーグ戦・スーパーラグビーの運営のお手伝いをするボランティアチーム「In Touch」(代表・眞柄泰利氏、サイバートラスト株式会社代表取締役)は昨年に続き、今年は規模を拡大して活動を行っています(昨年の活動詳細はこちら)。7月15日、秩父宮ラグビー場で行われた日本最終戦も約150人のボランティアスタッフが参加しました。

 さて、この試合では新たな試みとしてボランティアスタッフを対象にスポーツユニバーサル研究会を開催しました。日本ラグビーフットボール協会の賛同を得て、一般社団法人ジャパンエスアール主催、アゼリーグループの協力を受け、企画・運営をSTANDが担当、第1回として「車いすのお客様の対応」を実施しました。

 講師に東京リハビリテーション専門学校校長の宮森達夫さんをお迎えして、車いすのお客様を会場にお迎えする心構えと、車いすに乗る体験を行いました。

 昨年、そして今年とスーパーラグビーに来場した車いすのお客様は1試合あたり10名弱でした。秩父宮ラグビー場の客席数は2万4871席です。ここで少し、数字を当てはめてみます。日本の障がい者の数は858万人(平成29年障がい者白書)で全人口の6.8%にあたります。この割合でいくと、秩父宮の全席数に対しては約1600人。人口割合に当てはめた少々極論ではありますが、秩父宮ラグビー場にはこれだけの障がいがあるお客様が来場する可能性がるということになります。もっと多くの障がいのある人が訪れて、スポーツ観戦を楽しめたらいい。車いすの人がいることが車いすの人にとっても、周囲の人にとっても特別なことではなくなる、そういう環境をつくりたいという思いから始めたのがスポーツユニバーサル研究会なのです。

 我々STANDが昨年からスーパーラグビーの運営に関わっている目的のひとつに「すべての人が好きなスポーツを観る社会へ」の実現があります。すなわち会場に来た人が障がいの有無に関わらず、快適に楽しめる環境をつくることです。エレベーターやスロープなど、設備が整っていることはもちろん大切なことです。しかしその設置には時間も予算もかかります。いますぐ、私たちができることがあるのではないか。と始めたのが今回の取り組みです。

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伊藤 数子(いとう かずこ)

挑戦者たち編集長
/NPO法人STAND代表理事

新潟県生まれ。1991年に車いす陸上を観戦したことがきっかけとなり、障害者スポーツの振興に携わるようになる。未来に向けて次代の選手・ファンを拡げていくために、障害者スポーツのスポーツとしてのおもしろさを伝えるウェブサイト「挑戦者たち」、障害者スポーツ競技大会のインターネットライブ中継「モバチュウ」、障害者スポーツ体験会などの事業を企業・団体と協働で展開している。2012年ロンドンパラリンピックでは日本選手たちの挑戦を伝えるウェブサイト「The Road to London」を開幕1年前に開設した。著書に「ようこそ、障害者スポーツへ -パラリンピックを目指すアスリートたち-」(廣済堂出版)など。

ロンドン2012パラリンピック 日本選手たちの挑戦 「The Road to London」

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