二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2010.08.19
第3回 創業時から宿る社会貢献への意識
~障害者スポーツと企業のかかわり~(3/4)
二宮: マルハンは狩野選手へのサポートをはじめ、電動車椅子サッカーのW杯に特別支援したり、昨年は電動車椅子サッカー大会「マルハンカップ」を主催したりと、障害者スポーツに随分と貢献されています。障害者スポーツにかかわるきっかけはどういうことだったのでしょうか?
韓: 創業以来、弊社では社会貢献について非常に高い意識をもってやってきました。会社が苦しい時期にも、そういう精神のもとにできる範囲でやり続けてきました。その一環として2005年より神奈川県電動車椅子サッカー協会主催の「神奈川オータムフェスティバル」の協賛を行なってまいりました。社内でチームを結成し、試合に出場したり、ボランティアとして運営のお手伝いもさせていただいています。それが縁で2007年の電動車椅子サッカーW杯の支援や、昨年の「マルハンカップ」主催にいたった次第です。
二宮: 07年のW杯では、岡田武史前日本代表監督もアドバイザーとして参加したこともあって、反響が大きかったようですね。
韓: はい。弊社としても支援して本当によかったと思っています。
二宮: 一般スポーツでも、四国・九州アイランドリーグの香川オリーブガイナーズやNOMOベースボールクラブなどを支援されていますね。
韓: 私も高校、大学と野球をしていましたので、頑張っているアスリートたちを応援したいという気持ちは強いですね。
二宮: 韓社長は京都商業高校時代に甲子園に出場されて、準優勝されているんですよね。
韓: はい。だからといって、野球にばかりこだわっているわけではありません。とにかく挑戦している人たち、夢をもってチャレンジしている人たちを支援したいと思っています。
継続してこそスポーツ支援
二宮: しかし、日本の企業は業績が悪化すると、まずスポーツから切っていく傾向があります。社会人野球が典型的ではないでしょうか。
韓: 私は社会貢献には継続が重要だと思っています。会社が調子のいい時だけ支援して、悪くなったらリストラの対象とするということはしません。ですから、最初に継続してやれるかどうかを慎重に見極めることが重要だと思っています。
二宮: 韓社長がおっしゃったように、社会的責任という観点から見れば、やはり継続性が重要でしょう。しかし、日本の現状では、スポーツをやりたいという選手が今、企業を追われる"難民化"しているというケースも少なくありません。その中で、アイランドリーグは選手の貴重な受け皿となっているわけですから、まさにマルハンの果たしている社会的貢献は大きいのではないかと思います。
韓: そうですね。実際、そういう考えのもとにやってきました。また、スポーツ支援する企業が減少しているからこそ、私たちへの期待も高まっているのではないかと思っています。
二宮: 今後も、狩野選手のようにパラリンピックを目指す選手の支援も続けていくと。
韓: はい、そうですね。というのも、今回、バンクーバーに応援に行ったのですが、現地で狩野くんと行動を共にして、多くのことを感じることができました。彼たちが背負ってきたものは、私たちが考えている以上に大きなもので、それを乗り越えるために努力を積み重ねてきた人たちが、これだけ大勢いるのだなということを思い知らされました。そして、ナショナルチームに選ばれる選手でも、まだまだ大変な苦労をしながら競技を続けているということも......。ですから、私たちができる範囲の中で、精一杯支援をしていきたいと改めて思いました。
(第4回につづく)
<狩野亮(かのう・あきら)プロフィール>
1986年3月14日、北海道網走市出身。小学3年の時に交通事故で脊髄を損傷。両足が不自由となり車椅子の生活となる。小学5年からスキー指導員の父親の指導のもと、チェアスキーに親しむ。98年長野パラリンピックに影響を受け、本格的に競技を始めた。岩手大学在学中の2006年、トリノパラリンピックに出場。08年にマルハンに入社。2度目のパラリンピックとなった今年のバンクーバー大会では滑降で銅メダル、スーパー大回転で金メダルに輝いた。
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◇SITSKIER 狩野 亮
<韓裕(はん・ゆう)プロフィール>
1963年4月17日、京都府出身。株式会社マルハン代表取締役社長。京都商業高校時代にはレギュラーとして夏の甲子園に出場し、準優勝に輝く。法政大学卒業後、株式会社地産に入社し、90年には現在のマルハンに入社。営業統括部長、常務取締役、代表取締役副社長を歴任し、08年に現職に就任した。
(構成・斎藤寿子)