二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2010.10.21
第3回 理想はオリンピック&パラリンピック
~東京都「スポーツ振興局」の試み~(3/4)
二宮: 国体と全国障害者スポーツ大会を一緒にやろうという案は本当に画期的で素晴らしい。しかし、初の試みだけにいろいろと課題もあるのではないでしょうか。
笠井: そうですね。決して安易に考えてはいけないと思いますね。
二宮: 例えば、東京マラソンは今や応募者が殺到して、当選確率は10倍に膨れ上がるほど人気を博しています。しかし、スポーツには危険がつきもの。心臓の弱い人や体力のない人が無理に走って倒れるようなことがあれば、せっかくいい大会でも台無しになる恐れもある。障害者スポーツにおいてもさまざまな配慮が必要になってくると思います。
笠井: 障害者に対してはもちろんですが、周囲への配慮も必要になってくると思います。というのも、障害者スポーツに理解がある人ばかりとは限りませんからね。現状では、障害者スポーツを「スポーツ」として、選手を「アスリート」として認めている人はそう多くはないのではないでしょうか。そういう意味でも細心の注意を払っていきたいと思っています。
「スポーツ祭」の意義
二宮: とはいえ、方向性は絶対に間違ってはいません。ぜひ、成功させてもらいたいと思っていますが、具体的にこれまでの国体との違いはどこにあるのでしょうか?
笠井: 今年の千葉国体もそうですが、これまでは国体と全国障害者スポーツ大会の開催時期は2週間ほど空けられていたんです。しかし、我々はなるべく一体化させて、同じ期間でやっているという印象を出したいという意向がありますので、国体の閉会式から4日後には障害者の方の大会を開会することにしました。
二宮: 確かにその方が国体の余熱が残っている状態で障害者の大会も行なうことができますね。しかしなぜ、これまでは2週間も空けていたのでしょう?
笠井: 調べてみると、運営上、立て続けに行なうのは非常に難しいんです。例えば、国体以上にボランティアの協力が必要ですから、その人数やら配置やらの準備に時間がかかるんです。しかし、そうはいっても、「スポーツ祭東京2013」では、今までのように全く別のものにはしたくありません。なるべく同じ期間に、そして同じ会場で行ないたいと思っています。
二宮: それこそ、オリンピックとパラリンピックのように、ということですね。
笠井: はい、そうです。
二宮: ボランティアについては、東京マラソンを成功させているわけですから、都民の意識も高いのでは?
笠井: そうですね。東京マラソンでは出場者だけではなく、ボランティアの応募者も増えているんです。募集すると、もうあっという間にうまってしまいます。そういう土壌ができていますから、「スポーツ祭東京2013」でも活かしていきたいなと考えています。
(第4回につづく)
<笠井謙一(かさい・けんいち)プロフィール>
1954年、東京都出身。新都市建設公社総務部長、総務局国体推進部長、総務局行政部長などを経て、今年7月に新設されたスポーツ振興局初代局長に就任した。健常者と障害者の壁を取り除いた、全国初のスポーツ事業に勤しむ。
(構成・斎藤寿子)