二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2011.03.10
第2回 3年間の思いが詰まった107勝
~世界のトップであり続けるために~(2/5)
二宮: 連勝がストップしたとはいえ、107連勝は大記録ですよね。3年間負け知らずだったわけですから、いくら自分が意識していなくても、周囲からのプレッシャーもあったのでは?
国枝: そうですね。95連勝までは全く何も思っていなかったのですが、さすがに「あと5勝で100か」と思った時には、少し意識してしまいましたね。今思うと、それぐらいから気持ち的なところで少し守りに入った部分があったのかもしれません。
二宮: 車いすテニスを始めた頃、107連勝もするなんて思っていましたか?
国枝: いえいえ、全く思っていなかったですよ。107連勝の1勝目を挙げたときも、まさかこれほどまで勝ち続けるなんて予想もしていませんでした。100連勝を達成した時には3年間積み上げてきたものでしたから、やはり感慨深いものがありました。
二宮: 連勝記録がストップした世界マスターズでは、まさかの準決勝敗退。
国枝: 実はその大会には2007年以来の出場だったのですが、その時も負けているんです。しかも連勝し始める前の最後の敗戦でした。
二宮: 何か因縁めいたものを感じますね。
国枝: そうですね。世界マスターズはカーペットコートで、球足がすごく速いんです。手元でグッと伸びてくるので、ちょっと押されてしまうんですよね。自分のテニスは走ってなんぼなので、一発でガンガン抜かれてしまうと正直、しんどい。やはり、苦手意識はあったと思います。
二宮: パワープレーが得意な選手向きのコートというわけですね。
国枝: あとはビッグサーバー向きですね。負けた相手もそういうタイプの選手だったんです。逆に言えば、今の自分にはそういうコートで適応できるほどの実力がないということ。今後は、そういったコートや相手にどうすれば勝てるのかを考えていく必要があると思っています。
挑戦なくして勝利なし
二宮: まだ27歳ですから今後、連勝記録を自ら更新する可能性も十分にありますよね。
国枝: ただ、連勝にこだわっていいことはありませんからね。というのも、テニスは勝敗にこだわるだけでなく、試すことも大事なんです。やはりグランドスラムで勝つことが第一ですから、そこでいい結果を出すためには他の試合でいろいろとトライすることも必要です。ところが勝ちにこだわりすぎると、見えなくなる部分も出てきますし、試すことができなくなってしまう。ですから、今まで通り、連勝にはこだわらずにやっていきたいと思っています。
二宮: でも、連勝記録を止めたステファン・ウデ選手は嬉しかったでしょうね。みんな「いつかオレが止めてやる」と思っていたでしょうから。
国枝: いやぁ、あのはしゃぎようは忘れられないですね(笑)。
二宮: 国枝選手に勝つということは、それほどの価値があるということ。逆に言えば、とても名誉なことですよね。
国枝: そうですね。どんどんマークが厳しくなってきていますね。でも、強い相手が出てくれば、自分にとっても刺激になりますから。ロンドンパラリンピックに向けて、切磋琢磨できればいいなと思っています。
(第3回につづく)
<国枝慎吾(くにえだ・しんご)>
1984年2月21日、千葉県出身。小学4年の時に脊髄腫瘍で車いす生活に。小学6年から車いすテニスを始めた。2004年アテネパラリンピックダブルスで金メダルを獲得。07年には車いすテニス史上初のグランドスラムを達成。08年北京パラリンピックシングルスで金メダルに輝いた。09年4月、プロ転向を表明。06年から世界ランキング1位をキープし続けている。昨年は連勝記録が107でストップしたが、今年1月の全豪オープンでシングルス、ダブルスともに5連覇を達成した。
(構成・斎藤寿子)
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