二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2011.03.17
第3回 目指すは10年連続世界王者
~世界のトップであり続けるために~(3/5)
二宮: 昨シーズンは国際テニス連盟(ITF)が選ぶ「世界チャンピオン」(男子車いす部門)に選ばれました。4年連続での受賞という偉業を達成されました。
国枝: 世界チャンピオンになるには必ずグランドスラムをとらなければいけないので、毎年、一つの目標になっています。車いすテニスの男子では、これまでは3年連続が最多でした。その記録を更新できたというのは感慨深いものがありましたね。
二宮: 国枝さんはまだ27歳ですから、10年連続での受賞も夢ではない!?
国枝: そうですね。今はそれくらいを目標に考えています。
二宮: 車いすテニスは息の長い選手が多いですよね。世界ランク5位のロビン・アマラーン選手は43歳ですし、今年の全豪オープンの決勝の相手だったステファン・ウデ選手も40歳です。それだけ一度身につけた技術は簡単には落ちないということなんでしょうね。
国枝: そうだと思いますね。僕は車いすテニスは40歳までは落ちずにできる競技だと思っています。というのも、パワーやフットワークも必要ではあるのですが、それよりも車いすテニスではプレースメントが重要になってくる。いくら力や体力が上回っていても、いいコースにパンッと打たれてしまっては取れません。ですから、経験がモノをいう競技でもあるかなと。
二宮: 2007年からずっと勝ち続けて、敗戦はただの一度きり。国枝さん自身も周囲も、勝つことが当たり前のようになってきていると思いますが、どのようにしてモチベーションを保っているのでしょう?
国枝: 正直、モチベーションが下がっていないと言えば、ウソになります。でも、やるべきことが見えているので大丈夫です。どの大会でどれだけ優勝しても、追い求めるものに変わりはありません。自分のテニスレベルをいかに上げていくか。これに尽きるんです。そこさえきちんと見えていれば、モチベーションは保ち続けられると思っています。逆に、それを見失った時が怖いですね。
ロンドンに向けた準備
二宮: 国枝さんの目標の中には、毎年のグランドスラムの他に、4年に一度のパラリンピックがありますよね。当然、来年のロンドンパラリンピックでは北京に続いてのシングルス2連覇、そしてダブルスとの2冠を狙っているのでは?
国枝: はい、そうですね。北京からもう4年が経つんだと思うと、本当に早いですね。ロンドンでも必ず金メダルを獲りたいと思っています。
二宮: ロンドンパラリンピックは4大大会の一つ、全英オープンと同じウィンブルドンのコートで行なわれるのでしょうか?
国枝: いえ、パラリンピックは別の会場で行なわれるようですね。実は全英オープンでも車いすテニスはシングルスは行なわれず、ダブルスのみでの開催なんです。というのも、芝の上で車いすを動かすというのは難しいんですね。重くなって、スムーズに動かすことができないんです。ダブルスであれば、半面ずつをカバーすればいいのですが、シングルスはちょっと無理かなと。パラリンピックでは芝ではなく、ハードコートで行なわれるようです。
二宮: 国枝さんにとってハードコートはいかがですか?
国枝: 芝よりも球足が速いのですが、車いすを自在に操ることができる分、自分のテニスが最も生かされるサーフェスだと思っています。ですから、自分にとっては有利になるかなと。ただ、やはりせっかくロンドンでの開催ですから、ウィンブルドンの芝でやりたいなという気持ちはありますね。
(第4回につづく)
<国枝慎吾(くにえだ・しんご)>
1984年2月21日、千葉県出身。小学4年の時に脊髄腫瘍で車いす生活に。小学6年から車いすテニスを始めた。2004年アテネパラリンピックダブルスで金メダルを獲得。07年には車いすテニス史上初のグランドスラムを達成。08年北京パラリンピックシングルスで金メダルに輝いた。09年4月、プロ転向を表明。06年から世界ランキング1位をキープし続けている。昨年は連勝記録が107でストップしたが、今年1月の全豪オープンでシングルス、ダブルスともに5連覇を達成した。
(構成・斎藤寿子)
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