二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2011.10.27
第4回 世界のブラインドサッカー事情
~サッカーに魅せられて~(4/4)
二宮: 石井さんは、日本代表として国際試合を経験されてきました。これまでどんな国と対戦しましたか?
石井: 10試合ほど出場しているのですが、スペイン、ブラジル、ドイツ、韓国などと対戦しました。
二宮: 現在、世界のブラインドサッカー界での強豪国といえば?
石井: スペインやアルゼンチンも強いのですが、やはりサッカーの本場であるブラジルは頭一つ抜けている感じですね。昨年の世界選手権ではブラジルが優勝し、2012年のロンドンパラリンピックの切符を獲得しました。
二宮: 石井さん自身はブラジルと対戦したことは?
石井: はい、一度だけあります。その時は0-7というスコアで負けました。とにかく個人技に圧倒されました。日本人選手が体を寄せても、ブラジルの選手は全くバランスを崩さずにシュートまでもっていくんです。しかも、普通はコーラーが選手に細かく指示を出すのですが、ブラジルのコーラーはほとんど戦術的な指示を出さないんです。それだけ選手主体でやれているということなんだと思います。
二宮: 日本代表は今、どのくらいの位置にいるのでしょうか?
石井: 昨年の世界選手権では10カ国中8位という成績でした。
二宮: アジアの強豪国となると、どこですか?
石井: 北京パラリンピック開催のために強化に力を入れた中国は今、アジアでは圧倒的な強さを持っていますね。最近では国を挙げて強化しているイランも強くなってきています。その2カ国に韓国と日本を加えた4カ国が、アジアではトップ4となっています。
初のパラリンピック出場へ
二宮: さて、来年のロンドンパラリンピックの出場権をかけて12月(22~25日)には元気フィールド仙台でアジア選手権大会が開催されますね。アジアに用意された切符はわずか2枚。既に中国は出場が決まっていますから、中国を除いた最上位のチームが残る1枚の切符を獲得できると。
石井: はい、そうです。今回は6カ国で3チームずつのグループリーグを行なう予定だったのですが、残念ながら4カ国の出場となってしまいました。そのため日本、中国、イラン、韓国の4チームで総当たり戦を行ないます。
二宮: 一番のライバルは?
石井: イランも韓国も強いですからね。総当たり戦ですから、どこと当たっても勝たなければいけません。
二宮: 日本の強みはどこですか?
石井: やはり組織力だと思います。あとはスピードのある選手をいかにうまく動かしていけるか。そのあたりが勝利のカギを握るでしょうね。
二宮: ブラインドサッカーはアテネパラリンピックから正式種目として採用されました。しかし、日本はまだ一度も出場していません。
石井: はい。アテネはアジア予選が行なわれなかったので仕方ないのですが、前回の北京ではあと一歩というところで韓国に負けてしまい、出場を逃してしまった。その時の悔しさは未だに忘れられません。今回はぜひ、リベンジしたいと思っています。
二宮: ホームでの開催ですから、地の利をいかしたいところですね。
石井: そうですね。東日本大震災の被災者に勇気と元気を与えられるような試合をして、ロンドンの切符を掴みとりたいと思います!
(おわり)
<石井宏幸(いしい・ひろゆき)プロフィール>
1972年4月20日、神奈川県生まれ。小学1年からサッカーを始めるも、中学2年で喘息を患い、静養を余儀なくされる。19歳の時、白内障で右目の視力を失い、28歳の時には緑内障で左目の視力を失い、全盲となる。1年半後、神戸で行なわれた講習会に参加したことをきっかけにブラインドサッカーを始める。同年5月には日本初の国際試合に出場し、韓国と対戦した。2002年、日本視覚障害者サッカー協会(現・日本ブラインドサッカー協会)が発足し、理事に就任。04年からは同協会副理事長を務める。
(構成・斎藤寿子)