二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2012.08.30
パラリンピック特別企画[前編]
ロンドン五輪に続き、パラリンピックが8月29日(水)から9月9日(日)・12日間の日程でいよいよ開幕。期間中、「二宮清純の視点」ではパラリンピック特別企画〔全3回〕として、これまで登場した選手・ヘッドコーチ・関係者の方々のインタビューからロンドンパラリンピックにかける思いをピックアップし、紹介していきます。
岩佐義明ヘッドコーチ/車椅子バスケットボール男子日本代表
〔「世界ベスト4へ"ハヤテジャパン"」(2012年7月)より〕
二宮: ロンドンパラリンピックで男子日本代表は初のベスト4を目指すわけですが、そのためにはまず、予選プールを勝ち抜かなければいけません。日本が入ったBプールには、ドイツ、カナダ、コロンビア、ポーランド、そして開催国の英国がいます。強敵ばかりですね。
岩佐: はい。予選プールでは6チーム総当たりで戦い、上位4チームが決勝トーナメントに進出することができます。日本は第2戦のポーランド、第3戦のドイツ、第4戦のコロンビアの3試合のうち、最低でも2試合は勝たないと、厳しくなりますね。ただ、コロンビアとは初めて対戦することもあって情報が少ないので、どういうチームなのかよくわからないんです。時々、カナダに勝っていたりするので、ちょっと不気味な存在ですね。それだけに、ポーランドとドイツからは確実に白星を挙げて、勢いをつけたいなと思っています。
二宮: グループBの中では、カナダは頭一つ抜けているでしょうし、最終戦の英国は地元のアドバンテージがあります。
岩佐: そうなんです。ただ、英国とはいつも互角なんです。負けたとしても、わずか5点差くらい。バスケットボールでは1ケタ差での敗戦は、ヘッドコーチの責任と言われているんです。ですから、英国にもなんとかして勝ちたいなと思っています。
車椅子バスケットボールの競技日程の競技日程
予選ラウンド 8月30日(木)~9月3日(月)
グループB ドイツ・カナダ・コロンビア・ポーランド・日本・イギリス
決勝トーナメント 9月5日(水)~9月8日(日)【日本時間9月9日】
中西麻耶選手/陸上
〔「注目!世界の頂に最も近い日本人ジャンパー」(2011年6月)より〕
二宮: 中西さんと同じクラスでの女子幅跳びの世界記録はどれくらい?
中西: 5メートル09です。
二宮: 中西さんの自己記録が4メートル96だから、ワールドレコードまで、たったの13センチ!
中西: はい、そうなんです。練習では5メートル10とか12を出しているので、私とアル(コーチのアル・ジョイナー)は、もう世界記録を更新するものだと思っています。あとは風や、ファウルせずにボードにうまく乗れるか乗れないか......。
二宮: 当然、来年のロンドンパラリンピックでは金メダルを目指していると。
中西: 金メダルよりも、私は世界記録にこだわりたいですね。というのも、それが陸上という競技の魅力でもあると思うんです。例えば、私がやっていたテニスはいくら世界の大会で優勝しても、翌年になってしまえば「前回優勝者」という風に過去の話になってしまうわけですよね。でも、陸上の記録は破られない限り、永遠に世界一として残り続けることができる。だから、ずっと破られないような、破格の記録をつくるつもりです!
中西麻耶選手の競技日程
●女子 100m T44
予選 9月1日(土)【日本時間9月2日】
決勝 9月2日(日)
●女子 走幅跳 F42/44
決勝 9月2日(日)
●女子 200m T44
予選 9月5日(水)
決勝 9月6日(木)【日本時間9月7日】
第1回 悔しさから始めた陸上
第2回 負けず嫌いが競技者の原点
第3回 知られざる義足ランナーの走行技術
第4回 スポーツに障害の有無は関係なし!
第5回 欲しいのは金メダルよりも世界記録!
半谷静香選手・小川直也氏(小川道場 道場長)/視覚障害者柔道
〔「震災がもたらした出会い」(2012年8月)より〕
二宮: ロンドンは半谷さんにとっては初めてのパラリンピックですが、メダルの可能性はどうでしょうか?
小川: 決して簡単ではないと思いますね。5分間の試合の中で、3分くらいまで耐えることができたら、半谷に分があると思います。ただ、健常者の柔道とは違って、視覚障害者柔道では、がっぷりと組んだ状態で試合を始めますから、それだけ力勝負になってくるんです。我々だったら、組み手を切ったりして、相手がバテるのを待って中盤から一気に勝負にいくというような戦略を練ることもできますが、視覚障害者柔道ではそうはいきませんからね。
二宮: 離れて間合いを取るということもできませんから、体力的にもきついでしょうね。
小川: そういう部分では、我々がやっている柔道よりも大変ですよ。ただ、逆に言えば、最初から組んでの柔道なので、それほど細かいテクニックは必要ないと思うんです。ですから、半谷にも十分にチャンスはあるのかなと思っています。
二宮: 半谷さん自身の目標は何ですか?
半谷: 金メダルを目標にはしていますが、今のままでは難しいと思います。とにかく、少しでもレベルアップできるよう、本番まで精一杯練習したいと思っています。
二宮: ロンドンまでに新しい技を習得する予定は?
小川: それよりもまずは倒れない強さが必要かなと。今は自分で技をかけにいっても倒れてしまいますので、倒れずに粘れるようになれば、勝機は見えてくるかなと思っています。
半谷静香選手の競技日程
●女子52kg
予選・準々決勝 8月30日(木)
準決勝・決勝ほか 8月30日(木)【日本時間8月31日】
(中編につづく)