二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2012.09.06
パラリンピック特別企画[後編]
ロンドンパラリンピックも後半戦。期間中、「二宮清純の視点」ではパラリンピック特別企画〔全3回〕として、これまで登場した選手・ヘッドコーチなどのインタビューからロンドンパラリンピックにかける思いをピックアップし、紹介しています。
土田和歌子選手/車いす陸上
〔「進化し続けるパラリンピアン」(2011年11月)より〕
二宮: ロンドンパラリンピックでの目標は?
土田: 5000メートルは04年のアテネで金メダルを獲っているので、今度はマラソンで金メダルを獲りたいと思っています。
二宮: マラソンで金メダルを獲るために必要なことは?
土田: 42.195キロという長距離を走るわけですから、もちろん持久力は必要です。でも、それだけでは勝てません。車いすマラソンは自転車競技に近い競技です。ですから、テクニックとスピードが重要になってきますね。
二宮: テクニックとは具体的にどういうところなんでしょう?
土田: 要は駆け引きのことです。車いすマラソンでは、細かいところでスピードの出し入れをして、相手と駆け引きをするんです。その部分を鍛えていかなければ、ただ速いだけでは世界で勝つことはできません。特にロンドンのコースは上り下りが多いようなので、しっかりと準備をしていかなければいけないと思っています。
二宮: 勝負の仕掛けどころが多いと?
土田: はい。他の選手も研究をして、いくつも仕掛けどころを準備してくるでしょうから、それに対応できる力も必要ですし、自分から仕掛けられるテクニックも持っていなければいけません。でも、今はまだその部分での力が十分ではないので、この1年でしっかりと身に付けて、ロンドンに臨みたいと思っています。
土田和歌子選手の競技日程
●女子 5000m T54
予選 8月31日(金)
決勝 9月2日(日)
●女子マラソン T54
決勝 9月9日(日)
第1回 アスリート魂に火をつけたリレハンメルでの惨敗
第2回 長野での栄光の舞台裏
第3回 果たせなかった"ママで金"
第4回 マラソンで世界の頂点へ
寺西真人コーチ/水泳日本代表
〔「知られざるタッピング技術と重要性」(2012年4月)より〕
二宮: タッピングは見た目以上に難しそうですね。
寺西: 選手との呼吸が大事になりますね。0.2秒でもタイミングが遅いと、壁に衝突してしまいますし、かといって早ければいいというものでもありません。特にターンの時はあまり早いと、壁との距離がありすぎて、うまくターンすることができませんからね。
二宮: 結構、スピードも出ていますし、タイミングを計るのは至難の業ですね。
寺西: とにかく日頃からの練習で、各選手のそれぞれのタイミングをつかむことがタッパーには欠かせないんです。
二宮: タッピングのコツは?
寺西: 僕は選手と一緒に泳いでいるつもりで見ていますね。プールサイドで単にタッピング棒を持って待ち構えているのではなく、スタートとともに選手の中に入り込んで自分自身も泳いでいるんです。だから、タッチするタイミングが「ここだ」ってわかるんです。
二宮: タイミングが合わなくて、あわててもう一度タッチすることはないのでしょうか?
寺西: タッピングは原則1回しかタッチすることができないんです。ただ、どうしても1回目の試みでうまく選手の体にタッピング棒が当たらず、選手の安全を確保するためにという理由の場合は2回目まではOKとなっています。
二宮: 故意に2回はダメだと?
寺西: はい。タッパーはあくまでも選手の"眼"という役割ということで、タッチすることを許されているんですね。しかし、故意に2回以上タッチしてしまうと、それはもう他人からの意図的な"行為"とみなされ、選手が失格になってしまうんです。
水泳競技日程
8月30日(木)~9月8日(土)【日本時間9月9日】の日程で100m背泳ぎT11クラス世界記録保持者の秋山里奈選手ほか男女合わせて16名の選手が出場。
義肢装具士・臼井二美男氏/陸上日本代表チームメカニック
〔「義肢装具士が語るスポーツのススメ」(2011年9月)より〕
二宮: 来年にはロンドンパラリンピックが開催されます。このところのパラリンピックの発展は目を見張るばかりです。
臼井: 確かに目覚ましい進歩を遂げていると思いますね。現に韓国・大邱で行なわれた世界選手権に義足ランナーのオスカー・ピストリウス(南アフリカ)が出場したわけですから。時代はそこまできたんだなと。義足の性能ばかりが注目されがちですが、選手自体の身体やパフォーマンスにこそ、大きな進歩を感じます。海外の選手を見ていると、日本選手も負けられないなという気持ちにさせられますよ。
陸上競技日程
8月31日(木)~9月9日(日)【日本時間9月9日】の日程で男女合わせて36名の選手が出場。
第1回 望まれるスポーツ義足の認可
第2回 スポーツ義足づくりの第一歩
第3回 海外の技術革新を刺激に
第4回 走ることから広がる無限の可能性
第5回 心技体を強くするスポーツ義足
(おわり)