二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2012.09.13
ロンドン2012パラリンピック 4つのストーリー
8月29日に開幕し、12日間の日程を終えたロンドン2012パラリンピック。今回も選手一人ひとりに様々なドラマが生まれた。その中から4つのストーリー、国枝慎吾(車いすテニス)、廣道純(陸上競技・車いす)、車椅子バスケットボール男子日本代表チーム、秋山里奈(競泳)を紹介していく。
(文・斎藤寿子、写真・竹見脩吾)
車いすテニス・国枝慎吾
/国枝慎吾、再び真のチャンピオンへ
「よし、今日はいける」
9月8日、パラリンピックの決勝の朝を迎えた国枝慎吾は、手応えを感じていた。
「気持ちが据わったという感じで、準決勝までのようなかたさや変な興奮もなく、落ち着いていたんです。実際、試合でもコートに入ったときから普段のツアーと同じような感覚があって、プレーもはじめからいつもと同じようにできたので、今日はいけるなと思っていました」
国枝の変化には、丸山弘道コーチも気づいていた。
「準決勝のときも『ひとつギアを上げたな』と感じましたが、今日は朝の練習から、これまで以上に集中していたので、これは絶対にいける、と言って笑顔で送り出しました」
右ヒジの手術をして7カ月。心身ともに、国枝は最高の状態で金メダルをかけた大一番の時を迎えた。
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陸上競技(車いす)・廣道純
/消えることのない挑戦者魂
ロンドンパラリンピック8日目の5日、廣道純は陸上・車いす男子800メートル(T53)決勝に臨んだ。前日の予選では予想外の展開が起こった。各組3着6名は自動的に決勝に進出し、残り2枠は4着以下のタイム順で全体から2人が拾われることになる。当然、廣道は3着以内を考えていた。ところが、結果はまさかの組5着。決勝進出は絶望的かと思われたが、もう1組のレースが予想以上のスローペースとなったために4着以下のタイムが伸びず、奇跡的に8人目として決勝進出を決めたのだ。果たして"トラックの神様"が与えてくれたチャンスをいかすことはできたのか――。
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車椅子バスケットボール男子日本代表チーム
/諦めない姿勢が生み出した最後の1本
「55-71」――藤本怜央は試合終了後、電光掲示板をじっと見つめていた。
「これが自分たちが目指してきたベスト4にいく可能性のある英国との差か......」
ロンドンパラリンピック・車椅子バスケットボール男子。日本は予選プールを1勝3敗とし、決勝トーナメント進出には至らなかった。アテネ、北京に続いて3大会目の藤本にとっては、自らがエースとして臨んだ初のパラリンピックだっただけに、そこで結果を出すことができなかったことへの悔しさはひとしおだ。だが、自分たちがやってきたことに間違いはないという考えにブレが生じることはなかった。
「今のスタイルが日本のバスケットにとっては一番合っていると思う。それをどう成熟させていくかが今後、世界と戦うには必要だと思う」
終了直後にはエースとしての責任を感じてのことだろう、悔し涙を見せていた藤本だが、インタビューの最後には目にいつもの力強さが戻っていた。
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競泳・秋山里奈
/苦節8年、真の世界チャンピオンへ
「ずっとこれが聞きたかったんです。諦めずに水泳を続けてきてよかった......」
8年前、銀メダルを獲得したアテネ大会の表彰式で「次こそは」と誓った金メダルを獲得し、国歌を聞きながら、秋山里奈はしみじみとここまでの道のりを思い起こしていた。
「ロンドンに入ってから体に力が入ってしまって、一昨日も昨日も、そして今日の予選もボロボロだったので、すごく苦しかったんです。それでも、金メダルを一番欲しがっている自分こそが獲れるんだ、と信じていたので、最後まで『絶対に金メダルを獲る』という目標だけはブレることはなかったです」
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ロンドン2012パラリンピックが終わって 二宮清純
ロンドンパラリンピックが閉幕しました。成熟都市ロンドンでの開催だけあって、オリンピックに勝るとも劣らない盛り上がりを見せました。
日本において、これまでパラリンピックは新聞の社会面で扱われることが多かったのですが、今回はほとんどの新聞がスポーツ面で取り上げていました。まだまだ十分とは言えませんが、メディアの意識も変わってきたのかもしれません。
東京は2020年オリンピック・パラリンピックの招致活動を行なっていますが、オリンピアンに特化したパレードを見ても分かるように、もう少しバランスを重視する必要があるのではないでしょうか。
招致委員会が製作したPR用のビデオを観ても、例えば30秒版はオリンピアンが8人(チーム)に対し、パラリンピアンは1人とバランスを欠くものでした。
パラリンピックへの態度はその国の"スポーツ民度"をはかるリトマス試験紙と言えるのかもしれません。