二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2012.11.08
第2回 障がい者の潜在能力
~スポーツの力でビジネスサポート~(2/5)
二宮: さまざまな障がいを抱えている人たちが社会で生きてゆくうえで雇用の問題は切っても切り離すことができません。その意味では、渡邉社長がやっていることは非常に意義深いと思われます。
渡邉: ありがとうございます。雇用までとなると、きれいごとではできません。障がいを理解した上で、その人に見合った業務をさせなければいけないわけですからね。
二宮: 障がいのある社員の能力はどのように評価しているのでしょうか?
渡邉: 実は障がいのない社員よりも、障がいのある社員の方が、能力は断然上ということもあるんです。障がいのない社員は、何を行うにも取り立てて大きな苦労をすることはなく、普通にこなすことができるかもしれませんが、そのかわり一点だけずば抜けている特技を持っているという人は少ないと思います。ところが、例えば発達障がいの人たちは、コミュニケーションが苦手とか、こだわりが強いとか、落ち着きがないとか、不得手な部分がある。しかし、その分誰にも負けない高い能力を持っていることもあるんです。
二宮: 確かに世界的な功績をあげているような人の中には、発達障がいのひとつであるアスペルガー症候群と言われている人が少なくありませんよね。
渡邉: そうなんです。彼らには一般の人がいくら努力をしても追いつけない、生まれ持った天才的な才能がある。つまり「障がい者」と言われている人の中には、そういう優秀な人材がたくさんいるわけです。私はその発掘をしているにすぎません。
二宮: なるほど。実はもったいないことをしているわけですね。
渡邉: はい、そうなんです。一般の人とは異なる言動だけで判断していては、そうした才能が埋もれたままになってしまいます。
天才を生む"高い個性"
二宮: 現在、御社で働いている社員の中では、どんな才能を持った人がいるのでしょう?
渡邉: 例えば、普通は計算機を使わなければ計算できないような3次元の関数を、頭の中で計算してプログラムを開発してしまう男性社員がいますよ。
二宮: それはすごい!
渡邉: 障がいではなく、彼らは高い個性を持っている人たちなんですよ。ですから、自分の能力と関心がマッチした時には、とんでもない能力を発揮するわけです。
二宮: お話して思ったのですが、渡邉社長は発想自体がユニークですよね。
渡邉: 少し言動が他の人と違うというだけで、実際に話をしてみると、面白い人が多いんです。それに、彼らの才能は本当に高い。他の企業がなんで採用しないのか、不思議なくらいですよ。
(第3回につづく)
<渡邉幸義(わたなべ・ゆきよし)プロフィール>
1963年、静岡県生まれ。武蔵工業大学(現東京都市大学)出身。1986年、日本ディジタルイクイップメント株式会社(現日本ヒューレット・パッカード株式会社)入社。2000年に株式会社アイエスエフネット会社を設立した。現在は全国に35拠点、海外6カ国で事業を展開している。2010年、特定非営利活動法人Future Dream Achievementを設立し、「NIPPON IT チャリティ駅伝」を支援するなど、就労困難者のサポート活動を行なっている。
アイエスエフネットグループ http://www.isfnet.co.jp/
(構成・斎藤寿子)
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