二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2012.12.13
第2回 東京五輪・パラリンピックの実現に向けて
~日本のスポーツ振興の歩み~(2/4)
二宮: ロンドン五輪・パラリンピックを視察してどんな感想を持たれましたか?
河野: 特に印象的だったのは、五輪の開会式ですね。さすがは劇場文化が発展している英国だなと感心しました。対面形式ではなく、360度、どの方向から見ても楽しめるようなつくりでした。あれだけキャパシティーのあるスタジアムをうまく劇場にしていましたからね。
二宮: エリザベス女王の登場も英国ならではだなと思いました。映画「007」のジェームズ・ボンドと一緒にヘリコプターから舞い降りてきたような演出でした。
伊藤: 女王も台本通りに演技をされていらっしゃったということですから、すごいですよね。
河野: お互いにメリットがあることは協力し合うんでしょうね。英国王室が柔軟だなと感じたのは、この2012年の五輪・パラリンピックの招致活動を行っていた時のことです。ロンドンに評価委員会を迎えた際、女王も来られてレセプションを行なったんです。最後は女王がお帰りになるのを見送るというのが通常なのですが、この時は女王が評価委員会の面々を見送りました。「歴史上初めてのこと」と言われれば、評価委員会も悪い気はしませんよね。「英国王室も粋なことをやるなぁ......」と感心させられましたよ。
開催都市決定のカギは"熱意"
二宮: さて、20年五輪・パラリンピック招致レースも佳境を迎えています。来年9月に決定するわけですが、最終候補に残っているのは東京のほか、マドリード(スペイン)とイスタンブール(トルコ)。マドリードはスペインの債務問題が影を落としていますし、イスタンブールは内戦が続いているシリアが隣国で、安全面が懸念されています。
河野: 確かに各都市のマイナス面を挙げれば、東京が浮上してくるということも考えられます。しかし、おそらく今、最も重要なことは名古屋、大阪を合わせれば日本として4度目のチャレンジだということを強く訴えることではないかと思っています。落選しても諦めずに立候補し続けてきたロンドンや16年のリオデジャネイロ(ブラジル)が選ばれていることを考えても、IOC(国際オリンピック委員会)は開催への熱意を最重要視しているはずです。
二宮: でもマドリードは12、16年に次いで今回で3大会連続のチャレンジです。イスタンブールも5度目の立候補です。東京にアドバンテージはあるのでしょうか。
河野: やはり、最も重要なことは来年7月に行なわれるプレゼンテーションでは「何が何でも五輪・パラリンピックを日本でやりたい」という熱意をしっかりとアピールすることです。
二宮: 人選と内容が問われますね?
河野: おっしゃる通りです。説得力のあるプレゼンテーションができるかどうかに全てがかかっていると言っても過言ではありません。そのためには話し方も重要です。情熱的な話し方で聴衆をひきこませる方法もありますし、逆にゆっくりと落ち着いた話し方の方が説得力がある場合もある。その点も踏まえたうえでの人選がプレゼンテーションのカギを握ります。
(第3回につづく)
<河野一郎(こうの・いちろう)プロフィール>
1946年11月6日、東京都生まれ。医学博士。国立大学法人筑波大学学長特別補佐・特命教授。1996年ラグビーワールドカップでの日本ラグビー協会の強化推進本部長として日本代表の団長、1988年ソウルオリンピックから2008年北京オリンピックまで日本選手団の本部ドクター、本部役員などを歴任。2016年東京五輪招致委員会事務総長などを経て、2011年10月に独立行政法人日本スポーツ振興センター理事長に就任した。日本スポーツ界の医・科学・情報の中心的役割を担っている。
日本スポーツ振興センター http://www.naash.go.jp/
(構成・斎藤寿子)
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