二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2014.01.09
第1回 今季初戦での"嬉しい誤算"
~悲願の金メダルを目指して~(1/4)
いよいよソチパラリンピックまで残り2カ月となった。昨年12月には日本代表選手が正式発表され、今回は3競技15名の選手が出場する。なかでも注目はクロスカントリー、バイアスロン代表の久保恒造選手だ。昨シーズンにはバイアスロンで日本人初となる年間総合ランキング1位を獲得。今シーズンに入っても好調を維持しており、ソチでの活躍が期待される。その久保選手に、好調の要因、そしてソチへの思いを訊いた。
伊藤: 2014年最初のゲストは、ソチパラリンピックのクロスカントリー、バイアスロン日本代表、久保恒造選手です。今シーズンの初戦、昨年12月にカナダで行なわれたワールドカップ第1戦では、得意のバイアスロンでショート、ミドル、ロングの3種目全てで2位に入りました。ソチに向けて、調子は上向きといったところでしょうか。
久保: 今シーズンはホスト国であるロシアの選手たちが、間違いなく強さを発揮するだろうと予想していました。彼らがどんな仕上がり具合でシーズンに入るのかにも注目していたんです。実際、第1戦のカナダ戦は、ロシア選手にとっては代表選考も兼ねていたので、すでに仕上がった状態でしたね。そのロシア勢とトップ争いをすることができたというのは、大きな自信になりました。
伊藤: ソチに向けて、いい手応えをつかんだと。
久保: そうですね。正直言って、想定外の結果だったんです。というのも、僕はまだ仕上げの途中段階。ですから、代表の枠を取りにきているロシアの選手と、ここまで戦えるとは思っていませんでした。
二宮: 嬉しい誤算だったと。
久保: はい、そうですね。
【"1発に笑い、1発に泣く"バイアスロン】
二宮: 本番では7種目に出場するということですから、最多で7つのメダルが獲れる可能性があるということですね。
久保: 一番の贅沢を言えば、そうなりますね(笑)。
二宮: なかでも、とりわけバイアスロンではいい色のメダルを狙っていると。
久保: はい。特にミドルを得意としているので、そこでは確実にメダルを狙いにいこうと思っています。
二宮: バイアスロンは、クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた競技ですが、射撃では失敗した分だけペナルティが課されます。
久保: そうなんです。10メートル先の1.5センチの的を狙うのですが、外した分だけペナルティループといって、80メートルのサークルを走らなければいけません。
伊藤: 1発外すごとに80メートルサークルを1周走ると。2発なら2周、3発なら3周とペナルティが増えていくわけですね。
久保: はい。常に秒差での争いをしていますから、たった1発を外しただけでも、ペナルティを課される分、大きなマイナスになります。ですから"1発に笑って、1発に泣く"というレースが繰り広げられているんです。
伊藤: そのバイアスロンでは、昨シーズン、日本人として初の年間総合ランキング1位を獲得しました。
久保: ただ、改めてレースを振り返ってみると、どのレースも秒差で争っていて、特に強豪のロシアの選手たちが常に僅差で迫っている状態だったんです。ですから、自分が勝ったというよりも、誰が勝ってもおかしくなかったな、という気持ちの方が大きいですね。でも、その厳しい争いの中、総合で1位を獲得したことは大きな自信となりました。
(第2回につづく)
<久保恒造(くぼ・こうぞう)プロフィール>
1981年5月27日、北海道生まれ。高校3年時に交通事故で脊髄を損傷し、車椅子生活となる。入院中に知った車椅子マラソンでパラリンピックを目指し、2001年から本格的に活動を始める。07年からはシットスキーでクロスカントリーを始め、翌年夏に日立システムアンドサービス(現日立ソリューションズ)スキー部に入る。10年バンクーバーパラリンピックに出場。昨季はバイアスロンで日本人初の年間総合ランキング1位を獲得した。ソチパラリンピックではクロスカントリー、バイアスロンで計7種目に出場する。
日立ソリューションズ http://www.hitachi-solutions.co.jp/
(構成・斎藤寿子)
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