二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2014.11.13
第2回 ノーマライゼーションの実現へ
~2020年に残したい成熟都市のレガシー~(2/4)
二宮: 2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、あと6年を切ったわけですが、私はオリンピックは今の日本なら十分に成功させられると思っています。問題はパラリンピックです。これを成功させてこそ、成熟都市と言えるのではないでしょうか。
舛添: おっしゃる通りです。いかにパラリンピックを盛り上げることができるか。それこそが、ノーマライゼーションの実現ですよね。そういう意味では、例えばボランティアの面でも言えると思うんです。これまでボランティアというと、たくさんの人たちが応募してきてはくれますが、健常者がやるものだという考えでいたと思うんです。しかし、障がいのある方も大いにボランティアとして活躍してほしいと思っています。外国語の堪能な人が、外国人を案内する。そこに障がいの有無は関係ありません。
二宮: 確かにそうですね。障がいがあっても、できることはたくさんあるわけです。
伊藤: まさに障がい者スポーツの理念でもある「残された機能を最大限にいかす」ですね。
舛添: はい。また、健常者と障がい者が一緒に活動することで、お互いにとって、いい刺激にもなると思うんです。
伊藤: お話をお伺いしていると、舛添都知事は厚生労働大臣を務めた経験もあるからでしょうか、パラリンピックに対するお気持ちが本当に強いと感じています。
舛添: そうですね。厚労省の大臣に就任した時、一番驚いたのはメダリストへの報奨金がオリンピックとパラリンピックではあまりにも大きな差があったことだったんです。「こんなにも違うものか」とビックリしました。オリンピックは金メダルが300万円ですが、パラリンピックでは今年のソチ大会からようやく半分の150万円まで引き上がりました。できれば、2020年には皆さんに寄付を募ったりして、同額にできないかなと考えています。
【障がい者は高齢者の先輩】
二宮: 先ほど「ノーマライゼーション」という言葉が出てきましたが、この実現に向けては何が必要だと思われますか?
舛添: まずは発想の転換だと思いますね。例えば、我々はみんな歳をとれば、体のどこかしらに異変が出てくるわけです。そう考えれば、健常者も障がい者もなくなるわけですよね。
伊藤: あるパラリンピアンが「僕たち障がい者を、高齢者の方の先輩だと思ってほしい」とおっしゃっていました。
舛添: まさに、その通りです。日本は今や超高齢社会。みんなが最後まで健康で過ごせれば一番いいけれど、そういうわけにはいきません。大半の人が、耳が遠くなったり、視力が弱くなったりしますから。
二宮: パラリンピックの発展は、超高齢社会の充実にもかかわってくる。そう考えると、パラリンピックでの補助具の技術開発などは、超高齢社会に大きな役割を果たせるのではないでしょうか。
舛添: はい、素晴らしい用具や補助具の開発は、超高齢社会の日本はもちろん、世界に役立つと思います。
伊藤: 東京パラリンピックが2020年以降、さらに進んでいるであろう超高齢社会に役立つ商品、サービスをつくる、そのいいきっかけになるのではないでしょうか。
舛添: 私は高校時代、100メートル11秒台で走っていて、インターハイにも出たことがあるんです。その頃は筋肉がどうのなんて、まったく考えたことがありませんでした。普通に走っていれば、鍛えられましたからね。今になって、ようやく「あ、ここの筋肉が大事なのか」なんて考えるようになった(笑)。結局、みんなそうなるわけですから、その時のためのいい準備になると思いますね。
(第3回につづく)
<舛添要一(ますぞえ・よういち)>
1948年11月29日、福岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、東大助手、パリ大学現代国際政治関係史研究所客員教授、ジュネーブ高等国際政治研究所客員研究員を経て、79年に東大教養学部政治学助教授となる。89年に独立して「舛添政治研究所」を設立。2001年7月に参議院議員初当選。2期目には第一次安倍晋三内閣、福田康夫内閣、麻生太郎内閣のもと、厚生労働大臣を務める。10年4月から13年7月まで「新党改革」代表。14年2月から東京都知事を務める。
(構成・斎藤寿子)