二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2014.11.20
第3回 大事なものは、気持ち="心のバリアフリー"
~2020年に残したい成熟都市のレガシー~(3/4)
二宮: ひと昔前に比べれば、日本でもユニバーサルデザインの施設が増えてきました。しかし、それでも障がいのある人からすれば、まだまだという声は少なくありません。
舛添: ひと言でユニバーサルデザインと言っても、果たしてどんなものがいいのかは、とらえ方ひとつで違います。例えば、点字ブロック。日本では視覚障がい者の道しるべとして重視されています。しかし、海外では点字ブロックがないところも少なくないんです。
伊藤: それはどうしてでしょう?
舛添: 点字ブロックはかえって危ないという見方をされているようなんです。
伊藤: 凹凸でつまずいてしまうというわけですね。
舛添: はい。じゃあ、何がいいのかというと、これは障がいの種類や程度によっても異なりますから、なかなかまとめるのは難しい問題です。私はこうしたハード面以上に大事なことがあると思っています。それは、気持ちです。つまり、困っている人がいたら自然と手をさしのべると。それが当たり前にできる社会こそが、成熟都市のあるべき姿だと思います。
二宮: まさに心のバリアフリーですね。
舛添: その通りです。もちろん、ハード面の整備は重要です。今後も、東京都は全力をあげてやっていきます。しかし、100%完璧にできるかというと、そこはやはり難しい部分も出てくると思うんです。だからこそ、一番重要なのは人の気持ちではないかと。困った人がいたら、周りの人が助けてあげる。環境以上に、こうした心のバリアフリーの定着化を図ることも重要な課題だと思っています。
【体験によって深まる理解度】
伊藤: そのためには、障がいのある人がどんなことで困っているのかを理解することも大事になってくるのではないでしょうか。
舛添: おっしゃる通りです。例えば、目にアイマスクをして歩いてみるだけで、いかに目からの情報がないことが大変かがわかる。たった数センチの段差がどれだけ危険なのか、階段を上り下りすることがどんなに大変か......。子どもの頃から、こういう体験をすることで、自然と理解が深まるのではないかと思います。
二宮: 障がい者への理解が進めば、「あ、こういうことで困っているんだろうな」ということが想像できる。そうなれば、声をかけやすくなりますよね。
伊藤: 2020年東京パラリンピックをきっかけにして、こうした活動が広がれば、やがて未来への大きなレガシーとなりますね。
(第4回につづく)
<舛添要一(ますぞえ・よういち)>
1948年11月29日、福岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、東大助手、パリ大学現代国際政治関係史研究所客員教授、ジュネーブ高等国際政治研究所客員研究員を経て、79年に東大教養学部政治学助教授となる。89年に独立して「舛添政治研究所」を設立。2001年7月に参議院議員初当選。2期目には第一次安倍晋三内閣、福田康夫内閣、麻生太郎内閣のもと、厚生労働大臣を務める。10年4月から13年7月まで「新党改革」代表。14年2月から東京都知事を務める。
(構成・斎藤寿子)