二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2014.12.04
第1回 現場から届けられる障がい者スポーツの魅力
~メディアが映し出すパラリンピックとは~(1/4)
昨年9月、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定を機に、パラリンピックへの報道が増加している。その影響でパラリンピックや障がい者スポーツの認知度も徐々に高まっているが、その急先鋒に立っているのが、ニュース報道番組「NEWS ZERO」だ。同番組では2012年ロンドンパラリンピック前から、車椅子バスケットボール、車いすテニス、ブラインドサッカーなどを取り上げ、競技や選手の魅力を伝えてきた。そこで今回は同番組のメーンキャスターを務める関西学院大学大学院教授・村尾信尚氏にインタビュー。「NEWS ZERO」を通して、村尾氏が伝えたいもの、メディアの役割とは何なのかを訊いた。
伊藤: 今回のゲストは、関西学院大学大学院教授で「NEWS ZERO」のメーンキャスターとしてもご活躍の村尾信尚さんです。
二宮: 村尾さんとは以前、お昼の番組でコメンテーターとして一緒にお仕事をさせてもらっていたことがありまして、それ以来、親しくさせていただいています。村尾さんがメーンキャスターを務めている「NEWS ZERO」では、パラリンピック競技が多く取り上げられていますね。そのおかげで、随分と認知度も高まったのではないかと感じています。
村尾: ありがとうございます。「NEWS ZERO」では、パラリンピックの期間中はもちろんですが、日頃からブラインドサッカーや車いすテニスなど、さまざまな障がい者スポーツを取材するようにしているんです。
二宮: 視聴者からの反応はいかがですか?
村尾: 皆さん、「感動した」「勇気をいただいた」という感想が本当に多いですね。僕自身、障がい者スポーツの映像を見て、いつも心が動くんです。感動だけでなく、「もっと自分自身もチャレンジしなくちゃダメだな」なんて自己反省の気持ちになります。
【ダイレクトに届く実体験の声】
伊藤: 「NEWS ZERO」では、キャスターの皆さんが実際に現場に行って、競技を体験し、その生の声を聞くことができます。だからこそ、視聴者にもダイレクトに伝わってくるものがあるのではないかと思うんです。
村尾: そうですね。単にインタビューをするだけでなく、現場に行って、挑戦するというスタイルの取材だからこそ、いかに難しいかが視聴者にも伝わるのだと思います。現場に行った櫻井翔さんや桐谷美玲さんに聞くことで、選手たちの凄さがより伝わってきます。
伊藤: ある競技を紹介した時に、村尾さんがこうおっしゃったのがとても印象的でした。「障がい者スポーツは"心のスポーツ"ですね」と。思わずノートに書き留めたほど、その言葉に深く感銘を受けました。
村尾: 障がい者スポーツの選手たちは、スタートラインに立つ前に、様々なことを乗り越えてきただろうと思うんです。ですから、その心の強さや真っ直ぐさは、並大抵のものではないだろうと。そう思うと、障がい者スポーツを見ると、フィジカルな動きもさることながら、その選手が持っているメンタル的なしなやかさと強さに魅かれるんです。
二宮: 国内ではオリンピックに比べて、パラリンピックはハード面における環境も、金銭的な支援体制においても十分ではありません。そんな中で世界を目指すというのは、やはり相当な強い意志がなければ、なかなか続けられるものではありません。
村尾: おっしゃる通りです。そんなふうに頑張っている彼ら彼女らに対して、地域社会や政府がどう支援していくのかが今後の課題です。やはり社会的な動きが必要で、そのことを発信することもまた、「NEWS ZERO」で障がい者スポーツを報道する目的のひとつとなっています。
(第2回につづく)
<村尾信尚(むらお・のぶたか)>
1955年10月1日、岐阜県生まれ。一橋大学経済学部出身。78年、大蔵省(現財務省)に入省。三重県総務部長、主計局主計官、理財局国債課長などを経て、2002年7月からは環境省総合環境政策局総務課長を務める。同年12月に環境省を退官し、翌年から関西学院大学教授となる。現在は同大大学院教授。06年10月より「NEWS ZERO」(日本テレビ系列)のメーンキャスターとして活躍している。
(構成・斎藤寿子)