二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2015.04.16
第2回 共生社会実現のためにすべきこと
~企業と共につくる東京2020のレガシー~(2/4)
二宮:障がい者の方を助けるとか、救うという発想ではなく、共生していこうということですね。互いに認め合って行こうという、まさにダイバーシティ(多様性)の考え方が主流になってきています。
宮本:健常者であるがゆえに"これで大丈夫だろう"と思っていることが、実はそうでない場合があります。ある時、目の不自由な方と話す機会がありました。「宮本さん、点字ブロックってどう思われますか?キャリーバッグを引いて歩く時に、あんな邪魔なものはないでしょ」とおっしゃったんですよ。そして「デコボコがあると分かりやすいけれど、本当は別のものがあったらいいんですよね」と言われました。我々はデコボコが当たり前だと思っていましたが、決してそうではないですよね。
伊藤: おっしゃるとおりですね。私たちは"これがあるから安全だろう"と思うのですが、必ずしもそうではない。もっと違うものがあってもいいですね。
宮本:私たちは技術研究所を中心に、そういったことについていろいろな研究開発を進めています。それが実を結べば、東京オリンピック・パラリンピックにおいて、海外からどんな人が来られても対応できるのではないかと思います。
【白杖なしでも歩ける社会へ】
二宮:バリアフリーには、いわゆる精神面、心のバリアフリーと、ハード面のバリアフリーの2通りがあると思います。どちらも大切な問題と思うのですが、特に心のバリアフリーは、共生社会をつくっていく上で欠かせません。ハード面においては、たとえば先ほどの点字ブロックのような視覚障がい者の誘導について、技術的なイノベーションはどの程度進んでいるのでしょうか?
宮本: 今は、省エネのために部屋の中の人の動きを感知して、電源のオンオフの切り換えが自動でできるようになっています。その機能を利用し、たとえば感知したものを本人に情報として伝える。「あなたのいる場所の右手には壁があります」「その先には階段の段差があります」などと進行方向に関する案内ができれば、点字ブロックがなくても、極端に言えば白杖がなくても歩けるようになる可能性はあると思います。
伊藤: 目の不自由な方が、白杖がなくても歩ける。両手があくということは素晴らしいことです。オリンピック・パラリンピック開催を契機に実現できればいいですね。
宮本:決して不可能ではないと思います。私たちだけではなく、いろいろな会社とタイアップしながら、研究開発をしていきたいと思います。
(第3回につづく)
<宮本洋一(みやもと・よういち)>
1943年生まれ。67 歳。東京出身。
71年東京大学工学部卒、清水建設入社。
建築本部工事長、耐震営業推進室長、執行役員北陸支店長、同九州支店長、専務執行役員営業担当などを経て、07年6月から現職。
(構成・杉浦泰介)