二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2015.10.15
第2回 自らを成長させるライバルの存在
~日本ボッチャ界を牽引するエース~(2/4)
二宮:ボッチャを始められたきっかけは?
廣瀬:中学校の頃から、スポーツは好きでした。中学3年間は射撃のビームライフルを、高校に入ってからは陸上競技をやりましたね。高校を卒業してからも、何かスポーツをやりたかった。高校卒業間近に、担任の先生や体育の先生に相談をしたら、ボッチャを紹介してもらいました。学校の授業で少しやったことはあったのですが、競技ルールでやり始めたのは、高校3年の夏くらいからですね。
二宮:やり始めてみたら、すぐに夢中になったと?
廣瀬:そうですね。あれからもう10数年やっていますので、やはり面白かったからこそ、10年以上も続けられたのかなと思います。
二宮:日本選手権はBC2クラス史上最多の6度優勝。もう"エース"を通りこして、ボッチャ界の"レジェンド"と言えるんじゃないでしょうか。
廣瀬:いやぁ、どうでしょうかね(笑)。
伊藤:同じクラスには日本選手権2度優勝の杉村英孝選手もいます。ライバルの存在は大きいですか?
廣瀬:そうですね。やはり国内でも強い選手、ライバルはいます。杉村選手とは、最近は日本代表として一緒に海外遠征に行ったりもするんですが、国内で1位2位を争うような存在です。そういう選手がいればいるほど、自分も強くなれると思いますね。逆に言えば強い選手がいないと、自分も伸びていかない。ライバルがいれば、"自分も頑張ろう""その人を倒して上を目指そう"という気持ちになります。
伊藤:2013年の日本選手権では杉村選手に負けるまでは、連勝中でした。負けを経験したことで成長する部分もあったわけですね。
廣瀬:ずっと1位でいることは、もちろん目指さなければいけない。でもやはり争って刺激になる選手がいることは、自分にとってもプラスになるのかなとは思います。
【日々の体のケアが大事】
二宮:ちなみにボールの握り方に基本はあるんでしょうか?
廣瀬:人によって全然違いますね。下投げだったり、上投げだったり。それぞれ自分の投げやすいフォームで投げています。私の場合はこう握ります。
二宮:なるほど。5本指すべてを使うんですね。ボールをワシづかみにして投げると。転がしたり、浮かしたりもするとおっしゃっていましたが、投げるボールによって握りを変えたりするんでしょうか。
廣瀬:いえ、私の場合、基本変わらないですね。ロビングを投げる時も転がす時も、同じ握りで投げています。
二宮:練習をし過ぎると、腕や肘に負担がかかることもあるでしょう?
廣瀬:競技前後にストレッチをしています。仕事とか、練習をしていると体が硬くなってしまうことがあります。なのでストレッチと針治療など体のケアは欠かせないですね。疲労が溜まると、投げられなくなったりもする。体のケアは怠らないよう努めています。
二宮:野球選手やゴルファーも肩や肘はよく痛めますからね。
廣瀬:そうですね。やはりベストなパフォーマンスをするには、体のケアは一番大事なのかなと思います。
(第3回につづく)
<廣瀬隆喜(ひろせ・たかゆき)>
1984年8月31日、千葉県君津市生まれ。市原ボッチャクラブ、Noble Wings所属。競技歴12年。ボッチャ競技クラスBC2。先天性の脳性麻痺で高校3年時にボッチャを始める。2003年、日本選手権に初出場ながら3位に入賞すると、06年には初優勝を果たす。同大会では、BC2クラスで史上最多の6度の優勝を誇る。08年北京、12年ロンドンと2大会連続パラリンピック出場するなど国際経験も豊富。今年6月にBoccia World Open Championships Poznanで団体優勝、個人3位入賞すると、7月にはBoccia World Open Seoulで個人準優勝を果たした。左下投げ。
(構成・杉浦泰介)
以前に紹介した廣瀬選手の取材VTRです。合わせて御覧ください。
ミリ単位のスーパーテクニック!ボッチャ