二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2015.11.12
第2回 成果を見せることで広げたい支援の輪
~未来の共生社会につなげる東京パラリンピック~(2/4)
二宮:オリンピックと比べると、パラリンピックの注目度はまだまだです。しかし、本当の意味で東京大会が成功するためには、オリンピックはもちろん、パラリンピックも同等に考えなければいけません。例えば新国立競技場の建設についてですが、バリアフリーや障がい者にも優しい施設という点においては、どのような配慮、工夫がなされているのでしょうか。
遠藤:新国立競技場では、皆様にご迷惑をおかけしましたが、私が責任者になってからは整備計画をしっかりと作って、現在、公募をしています。その時に総理からも「世界最高水準のバリアフリー施設にするように」と言われました。観客席の車椅子席の割合を例にとるとオリンピックは全体の0.75%以上を求められている。パラリンピックでは1~1.2%必要とされているんです。
伊藤:そうですね。国際パランピック委員会(IPC)が独自の基準で定めている「IPCアクセシビリティガイド」にも書かれています。
遠藤:私どもとしては観客の導線の問題も含め、世界最高水準のバリアフリーを目指します。ただバリアフリーにするだけではなく、色々なものを通じて、それぞれが自立し支え合うことのできる共生社会を目指したいですね。聞く所によると2012年ロンドン大会は、オリンピックとパラリンピックを一体にしたスタートの大会だったと。今度、日本で開催される際にはそのロンドン大会を越えて、共生社会のモデルとなる大会にしたいですね。
二宮:なるほど。同等あるいは、それ以上のものにしたいというわけですね。
遠藤:そういう意味では、オリンピックはオリンピックで強化を進めないといけませんが、パラリンピックの体制整備にも全力をあげようと思っているところです。今はそちらの方に気持ちがいっています。
伊藤:未来の共生社会を新しい国立競技場の中で見せるというか。象徴的な存在にすることができると嬉しいですね。
遠藤:そうですね。是非やりたいと思っています。
【目標は1ケタ順位】
二宮:遠藤大臣は東京オリンピックに関しては、メダルの目標数を出していますが、パラリンピックに関してはどのように考えていますか?
遠藤:パラリンピックもオリンピック同様に1ケタ順位にしようと思っています。ロンドンパラリンピックでは24位でした。それを何とか5年後には一気にあげていこうと。それを目標に、今は考えています。
二宮:今、順位の話が出ましたが、新聞などでは金メダルの個数で順位を付けているわけでよすね。
遠藤:確かにそこの判断基準は難しいところですね。
二宮:そういう意味では目標設定は簡単ではない。もし順位だけ上げるのならば、金メダルを狙う。しかしIOC憲章には「オリンピックは競技者間の競争であって、国家間の競争ではない」と書かれてありますよね。ここの整合性が難しいんじゃないでしょうか。
遠藤:そうですね。ただ先頃行われたラグビーのW杯で、日本代表が南アフリカ代表に勝ちましたよね。その日本代表の活躍を見て、国民の皆様がラグビーに対して興味を持ち、ファンが増えている。そういう意味では順位は別としても、成果が見えることによって、関心が高まったわけです。パラリンピックも普及するためには、目に見える結果は必要かと思います。必ずしも金メダルにこだわっているわけではありませんが、1個でも多くメダルをね。4位でもいいんです。ただ成果が出た方が、こちらとしてはサポートをしやすい面はありますね。
(第3回につづく)
<遠藤利明(えんどう・としあき)>
1950年1月17日、山形県生まれ。中央大学法学部に入学後、ラグビーを始める。ポジションはスクラムの最前線を担うプロップを務めた。大学卒業後、山形県議会議員を経て、93年に衆議院議員に当選。以降、文部科学副大臣、農林水産委員会委員長、自民党幹事長代理を経験し、現在、東京オリンピック・パラリンピック大臣としてスポーツ環境整備などに尽力している。
(構成・杉浦泰介)