二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2016.09.29
第5回 4年後への期待
~パラリンピック初代女王を目指して~(5/5)
伊藤数子(「挑戦者たち」編集長):今年は4年に1度のパラリンピックイヤーです。パラバドミントンの実施は次回の東京大会からですが、リオで実施される22競技の中でお話しを伺いたい選手はいますか?
(※収録は8月に行われました)
鈴木亜弥子:パラリンピックに限らず、グランドスラムでも数多くの勝利を手にしている車いすテニスの国枝慎吾さんです。国枝さんには優勝し続けるための精神的な部分について聞きたいです。
二宮清純:4年後に東京パラリンピックが開催されることもあって、いろいろな競技の選手が注目されてきています。
鈴木:そうですね。ただ、今まではパラリンピックが開催されても日本ではほとんどテレビ中継がなかったように思います。それが今回はどのように日本のメディアが取り上げるのかに興味がありますね。
二宮:メディアに注目される他競技の選手と自分を重ねたりは?
鈴木:まだできないですね。私は今年現役に復帰した身ですから、5年前から去年までの成績がまったくない。ほとんど1年目と同じなので、まだまだです。このまま優勝を続けていければ注目されるかなという感じです。
伊藤:東京パラリンピックでパラバドミントンが初の正式競技として実施されるということで、そのあたり選手たちはどんな反応を見せていますか?
鈴木:みんな出場してメダルを獲りたいという気持ちはすごく強いと思います。
【シングルス一本で勝負】
二宮:東京パラリンピックが決まったことで、ダブルスのペアリングなどにも動きが出てくると思います。ちなみにダブルスは同じ障がいのクラスで組むのでしょうか?
鈴木:そこがちょっと複雑なんです。男子と女子でもルールは違ったりします。
二宮:2月の全日本選手権では、同じ障がいクラスの豊田まみ子選手と"スズトヨ"ペアとしてダブルスに出場していましたね。
鈴木:はい。ただ、これは国内限定のペアで、SU5同士は国際ルールでは組むことができないんです。国際大会の女子ダブルスではSU5の選手は、足の障がいが重いSL3の選手と組んで試合に出ています。
伊藤:そうなんですか!? 男子選手と組むケースもあるのでしょうか?
鈴木:ミックスダブルスでは女子ダブルス同様、手に障がいのあるSL5の私は足の障がいが重いSL3の選手と組めます。
二宮:ミックスダブルスはパラリンピックでも採用されるのでしょうか?
鈴木:それがまだ分からないんですよね。どの種目が残るのか、クラスが統合されたりしないか......と選手たちは戦々恐々としています。
二宮:鈴木選手は現在、ダブルスにはエントリーせず、シングルス一本で国際大会に出場されています。今後はどのような方向性で?
鈴木:まずは現役から離れていたブランクを、自分でどれぐらい埋められるかですね。正直、今は自分のことでいっぱいいっぱいです。まずは5年分を取り戻すことが先決です。
伊藤:当面はシングルス一筋なんですね。ずばり東京パラリンピックでの目標は?
鈴木:東京では金メダルですね。私はパラリンピックの金メダルだけが獲れていないので、絶対にほしいと思っています。
(終わり)
<鈴木亜弥子(すずき・あやこ)>
1987年3月14日、埼玉県生まれ。七十七銀行所属。生まれつき右腕が肩より上がらない障害がある。小学3年でバドミントンを始め、中・高・大学までバドミントン部に所属。インターハイに出場するなど健常者の大会で結果を残してきた。大学3年で初めて障がい者の大会に出場し、2009年の世界選手権と2010年のアジアパラ競技大会で金メダルを獲得した。その後、一度は現役を引退したが、東京パラリンピックを目指して今年復帰すると、2月の日本選手権で優勝。アイルランド、インドネシアと国際大会でも連続優勝を果たした。8月22日現在世界ランキング4位。
(構成・杉浦泰介)