二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2017.06.01
第1回 役割が重ならないように連携を
~2020年東京大会成功へ、汗かき役として動き回る~(1/5)
昨年8月より東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当国務大臣(以下東京オリンピック・パラリンピック担当大臣)を務める丸川珠代氏。3年後に迫った大会の成功と、共生社会の実現に向け尽力している。大会組織委員会、開催地の東京都との連携を取りながら、「汗かき役として動き回る」と語る丸川大臣に、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた課題について訊いた。
伊藤数子(「挑戦者たち」編集長):今回のゲストは丸川珠代東京オリンピック・パラリンピック担当大臣です。昨年8月に就任してからを振り返っていかがでしょうか?
丸川珠代大臣:9カ月が経ちましたが、あっという間でしたね。私がオリンピック・パラリンピック担当大臣に就任した頃から国民の皆様のオリンピック・パラリンピックに対する印象がまた別のステージに進んだなという感覚があります。
二宮清純:別のステージとは?
丸川:それまでは新国立競技場のデザインや費用面が注目されていましたが、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが終わり、国民の皆様にも"いよいよ次は東京だ"ということがより現実的になったのではないでしょうか。会場の見直しなど議論を重ねていく中で、報道を通じてオリンピック・パラリンピックに関する情報が更に深く浸透してきたような印象を受けます。私も"新しい段階に進んだんだな"と感じていました。
二宮:一般にはオリンピック・パラリンピックは都が開催することまではわかっていても、誰が運営するか分かりづらい部分もあると思います。実際は東京都や組織委員会の他に国も関わってきますし、その中にはスポーツ庁があり、担当大臣もいる。それぞれの役割分担を一般の人に分かりやすく説明をお願いします。
丸川:例えばオリンピックは放送だけ見ていますと国家事業に見えますよね。しかし、実際は民事上の契約で、東京都とJOC(日本オリンピック委員会)とIOC(国際オリンピック委員会)との契約なんです。主催者は東京都、実際の運営は組織委員会、そして国がまわりを支えるという役割があります。それぞれにしかできないことがありますから、お互いの役割が重ならないように、譲り合ってしまわないように連携が必要になるということなんです。
二宮:なるほど。その点は前大臣の遠藤利明さんからの引き継ぎでアドバイスはありましたか?
丸川:遠藤大臣はすごく前向きで、「最後は必ずうまくいくよ。難しく考えずに頑張れ!」という感じでした。
二宮:ポジティブな方ですね(笑)
丸川:余計なプレッシャーを感じずにやるべきことに集中することができたので、本当にありがたかったです。ただ前の都知事と遠藤大臣と組織委員会との役割分担を定めた後に色々な変化が起きてしまった。仕切り直しとなった部分はありましたので、今は具体的にどんな作業が必要なのか、それらの作業を誰が分担するのかという話を進めています。
二宮:なるほど。仮設や新設の競技場をつくる費用は基本的に組織委員会や東京都の負担になっていますよね。それを東京都の費用軽減や震災復興のために開催会場に選ばれた自治体に「払え」と言われれば各自治体からは「東京都の約束違反だ」という話にもなる。でも一方では「多少の恩恵があるのだから費用を負担してください」との言い分も分からないではありません。この点は、丸川大臣はどのようにお考えですか?
丸川:各自治体の想いを聞きながら調整をするのが、国の役割です。各自治体も議会の承認を得られなければ予算は通りません。税金を使うからには使うなりの理屈がなければいけない。どうしても理屈がつかない場合は、やはり組織委員会のお金に頼らざるを得ません。そういった落としどころを探るなど我々が汗をかく立場で機能していかなければいけないと思っています。
【2017年4月24日、インタビュー実施】
(第2回につづく)
<丸川珠代(まるかわ・たまよ)>
1971年1月19日、兵庫県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。2007年7月に参議院議員初当選を果たす。以降、厚生労働大臣政務官、参議院厚生労働委員会委員長、環境大臣・内閣府特命大臣(原子力防災担当)などを務めた。昨年8月に東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当国務大臣に就任。現在、東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境整備などに尽力している。
(構成・杉浦泰介)