二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2017.06.15
第3回 ユニバーサルデザイン目指すインフラ整備
~2020年東京大会成功へ、汗かき役として動き回る~(3/5)
二宮清純:スタジアムのユニバーサルデザイン化はもちろんのこと、やはり観客や選手の宿泊施設も重要です。
丸川珠代大臣:そうですね。先日、大分国際車いすマラソンを視察に参りました時、運営やボランティアの方々の働きを見て素晴らしいと感じました。これまで歴史を継いできた先輩方が手探りで作ったマニュアルをどんどん皆さんで磨いている印象があります。建物は決してユニバーサルデザインではない部分もあるんです。それを障がいに合わせて臨機応変に対応し、皆で工夫している姿を拝見しました。
伊藤数子(「挑戦者たち」編集長):それが丸川大臣が常々おっしゃっている「心のバリアフリー」ということですよね。
丸川:そうです。もちろん物理的なバリアフリーは選手村や新設のスタジアムやアリーナ、それ以外の会場でも改修できるところはどんどんやっていきます。とはいえ街に一歩出ると、まだまだというところもあります。まずは何がどうしてバリアになっているかを皆が知ること、そしてバリアを超えるためにどんな方法があるのか。そういう意味では心のバリアフリー教育を学校や地域のコミュニティでも進めていく必要があると考えています。
二宮:インフラ面などの環境整備はオリンピック・パラリンピック担当大臣の役割だと?
丸川:私は旗振り役で、東京都を含む地元自治体、事業者の皆さまに御協力をいただいて、国もしっかりバックアップをして実現していきます。
二宮:なるほど。最近、地下鉄に乗っていてよく見かけるのですが、改修工事をしている駅が多いですよね。これも2020年をにらんでのものでしょうか?
丸川:ええ。特にホームドアの設置に関しては、視覚に障がいのある方の転落事故が起きたこともあり、国土交通省が早急に見直しをしました。地下鉄の事業者の方々にも協力いただき、ホームドア設置を急いでもらっています。
二宮:ホームドアの設置以外には何か取り組んでいることはありますか?
丸川:現在は車いすで移動するルートがわかりにくく、遠いという問題があります。これが少しでも解消されるように、複数のルートを競技場周辺の駅で設けていただけるようにお願いをしているところです。オリンピック・パラリンピックの会場となる新国立競技場、東京辰巳国際水泳場、東京体育館の最寄り駅も改善工事を進めています。
二宮:インフラ面の整備は当然、東京都との連携が必要になってきます。
丸川:はい。私から気になることがあれば、連絡しています。都の職員の方もしばしば説明にきてくださったりとコミュニケーションは取っています。競技会場の見直しの件はIOC(国際オリンピック委員会)にも入っていただいて、議論をしましたが、結局、元の鞘に収まりました。会場における関係自治体については、我々も橋渡し役となっています。
二宮:下手に間に入ったら、「流れ弾に当たる」という声もあります(笑)。
丸川:それでも間に入るのが、我々の仕事ですから。スタッフも皆両方から弾を受けながらやってくれています(笑)。
【2017年4月24日、インタビュー実施】
(第4回につづく)
<丸川珠代(まるかわ・たまよ)>
1971年1月19日、兵庫県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。2007年7月に参議院議員初当選を果たす。以降、厚生労働大臣政務官、参議院厚生労働委員会委員長、環境大臣・内閣府特命大臣(原子力防災担当)などを務めた。昨年8月に東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当国務大臣に就任。現在、東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境整備などに尽力している。
(構成・杉浦泰介)