二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2017.06.22
第4回 真のオールジャパン体制で大会の成功を
~2020年東京大会成功へ、汗かき役として動き回る~(4/5)
伊藤数子(「挑戦者たち」編集長):これまでのお話で東京都、組織委員会、国のそれぞれの役割が理解できました。オリンピック・パラリピック開催が東京に決まる前、「日本全体で招致を勝ち取ろう。オールジャパン体制だ」という言葉が出ていました。本来オリンピック・パラリンピックは国ではなく都市が開催するものなのですが、あの言葉にかなりの効き目があったので"皆でやるんだ"という意識が生まれ、それぞれの役割が何なのかを難しくさせていたのかもしれません。
丸川珠代大臣:確かに招致の時のメッセージがとても強かったですよね。"世界中から震災復興に対するたくさんの応援をいただいたので、ありがとうの気持ちを込めてオリンピック・パラリンピックを開催させてください"というメッセージでした。国民の皆様もそう理解したのだと思うんです。
二宮清純:最後のプレゼンテーションの時も、震災復興についてはかなりアピールしましたからね。それに2020年には訪日観光客を年間4000万人にする目標を立てています。世界中からたくさんの観光客が訪れるのは東京だけではないはず。地方自治体との協力は必須ですね。
丸川:そうですね。もちろん主体的に動くのは自治体になりますが、我々もできる限り協力します。"他の自治体はこうなっていますよ"などと情報交換することもできますから。
二宮:1964年東京オリンピックのトラウマと言いますか、当時は地方から人もお金も東京に集まった結果、一極集中化を生んでしまった。今でも地方の人にお話を聞くと、「オリンピック・パラリンピックを応援しますよ」という声もある一方で、「また一極集中じゃないですか」との不満の声もないわけではありません。
丸川:その点は、地方にもメリットがあるということを理解してもらわなければいけません。例えば、キャンプ地の誘致に多くの自治体が積極的に動いています。多くの観光客が訪れた経験がある自治体、海外とつながるきっかけを模索している自治体と、状況は様々です。その中で、自分たちの地域がその国とのつながりをいかに作れるかを考え、スポーツだけではなく、文化や暮らしを含めて"豊かな交流"を考えている自治体が積極的になっている気がします。
二宮:つまり自治体側も積極的に自らの魅力をアピールしてください、ということでしょうか。
丸川:はい。"自分たちの売りや個性はなんだろう"と考えに考え抜いている地域が、誘致した国と良い交流を持つことができるのだと思います。いずれにしても自治体にはできる限り協力するつもりです。
二宮:具体的にはどんなことに協力していくのでしょうか。
丸川:たくさんのお客様を迎え入れられるように、全国の空港やクルーズ船の受入機能の強化を図っています。税関、出入国管理、検疫の職員数も一生懸命増やしています。
二宮:ところでリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックを視察されたとお聞きしました。パラスポーツに対する印象は?
丸川:リオデジャネイロパラリンピックではいくつかの競技を観戦しました。様々な国の異なる障がいのある個性豊かな選手のプレーを目の当たりにして、改めてパラスポーツは面白く、素晴らしいと感じました。
伊藤:丸川大臣はいろいろな現場に来てくださるから、関係者に話を聞いても皆喜んでいます。
丸川:とんでもないです。自分の目で見ないとわからないことがたくさんありますから。これからも積極的に足を運んで、パラスポーツのこともいろいろと知りたいと思っています。
【2017年4月24日、インタビュー実施】
(第5回につづく)
<丸川珠代(まるかわ・たまよ)>
1971年1月19日、兵庫県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。2007年7月に参議院議員初当選を果たす。以降、厚生労働大臣政務官、参議院厚生労働委員会委員長、環境大臣・内閣府特命大臣(原子力防災担当)などを務めた。昨年8月に東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当国務大臣に就任。現在、東京オリンピック・パラリンピックに向けた環境整備などに尽力している。
(構成・杉浦泰介)