二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2018.07.12
前編 人と人との繋ぎ役
~共生社会のロールモデルに~(前編)
株式会社スタイル・エッジ(代表取締役:金弘厚雄)は弁護士や医師などの士業・師業に特化したコンサルティング・マーケティング支援が主な事業だ。さらには障害者雇用に積極的に取り組んでおり、パラアスリートへの支援も行っている企業でもある。また同社は視覚障害者柔道のパラリンピアンであり、株式会社ユニバーサルスタイルの代表取締役を務める初瀬勇輔選手との協業で株式会社スタイル・エッジMEDICALを立ち上げ、予防医学をテーマとした事業を展開している。執行役員の花咲圭祐氏に、スタイル・エッジグループが掲げるビジョンを訊いた。
伊藤数子(「挑戦者たち」編集長): 御社の主な事業について教えていただけますか?
花咲圭祐: 弊社は弁護士、司法書士などの士業と呼ばれる方々や医師などの師業と呼ばれる方々の経営における総合的な支援と協業をさせていただくことがメイン事業です。例えば弁護士の先生が事務所を立ち上げたいという時に事業計画から集客、営業の支援まで行っています。
伊藤: 御社は士業・師業の方々だけではなく、いい先生に出会えずに困っている人たちに目線が向いている印象があります。
花咲: 弊社では知識格差をなくし、社会的弱者のいない世の中にしたいと考えています。スポーツに例えると、「サッカーのルールを知らないで試合に出る人はほとんどいない。でも日本で生活をしていて、日本の法律を知らずに損している人はたくさんいる」。そういった方々の機会損失をなくしていきたいという思いで事業を展開しています。
二宮清純: 専門家と一般消費者の橋渡し役を?
花咲: はい。弊社は士業・師業の事務所だけと取り引きするというよりも、どうすれば皆様がいい事務所に巡り合えるかをサポートさせていただいています。
二宮: 近年、日本では外国人労働者が増えてきていますから、行政書士のニーズは今後増加するでしょうね。
花咲: そうですね。弊社は元々、弁護士事務所の支援をメインとして起業しました。そこから徐々に士業・師業というジャンルで広げていきつつあります。
【次代のパラアスリート育成】
二宮: 今回のインタビューに同席している初瀬さんとは、御社の金弘代表が元々友人だったと伺いました。
花咲: そうですね。そういった縁もあり、弊社はパラアスリートとしての初瀬選手へ支援をしていました。そこから初瀬さんが理事を務める日本パラリピアンズ協会とも繋がりができていったのです。そんな折、日本パラリンピアンズ協会は2017年度から「ネクストパラアスリートスカラーシップ」(NPAS)を創設しました。NPASはパラアスリート育成を目的とした給付型の奨学金制度です。そこに弊社は初年度から協力させていただきました。
初瀬勇輔: 日本パラリンピアンズ協会としても次世代のパラリンピック選手をつくる。もっと言えば次世代のパラスポーツを引っ張るリーダーを育てていきたい。そういう理想を実現するためには、やはり資金が必要になります。そこでスタイル・エッジに相談をしたところ、「理念にもマッチするし、できることがあれば支援したい」と即決していただいたんです。
花咲: 私どもは、初瀬さんの応援をしている中で、選手の苦労や活動費の捻出が大変だということに気づきました。パラスポーツを始めようとする子どもたちも、経済面での苦労があると伺いました。例えば車椅子バスケットボールの競技用車椅子を購入しようと思ったら50万円ぐらいかかるそうです。普通の中高生ではなかなか手の出せない額です。そういったこともありNPASの件を弊社はすぐに参加させていただくことになりました。これからパラスポーツを始めようという意欲を持っているのに、資金難を理由に活動できなくなるのはとてももったいない。弊社としてはいいきっかけをいただいたと思っています。
初瀬: NPASの長所は奨学生を日本パラリンピアンズ協会が中心となって選べることです。団体や企業が支援対象選手を競技力だけで選んでしまうと、既に競技団体から強化費を受給している選手が受け取る可能性が出てきます。
二宮: 御社はベンチャー的な要素がありますよね。パラスポーツはいわゆるスポーツベンチャー。そこに親和性があるのでは?
花咲: スタイル・エッジは「80億の人生に彩りを」というビジョンを掲げています。その80億の中には障害のある人たちも含まれている。だから「障害の有無にかかわらず、誰もがスポーツを楽しめる社会の実現に向けて活動していく」という日本パラリンピアンズ協会の理念にもすぐに賛同したのです。元々、医療の分野で尽力したいと考えていましたから、パラスポーツとリンクすることで障害者雇用、予防医学に関しても積極的に事業展開をしていきたいと考えています。
(後編につづく)
<花咲圭祐(はなさき・けいすけ)>
1985年生まれ。大阪府出身。2011年、株式会社スタイル・エッジ入社。各種士業クライアントのWebマーケティング支援、ハンズオン型のコンサルティングなどに従事した。その後、グループ会社である株式会社スタイル・エッジREALTYの設立から名古屋・大阪・福岡の支店拡大を経験。現在はスタイル・エッジの執行役員として人事部の統括とスタイル・エッジREALTYの取締役を兼務している。
<初瀬勇輔(はつせ・ゆうすけ)>
1980年生まれ。長崎県出身。法律家を目指していたが、中央大学在学中に緑内障により視覚障害になる。2005年、視覚障害者柔道を始める。その年の全日本視覚障害者柔道大会男子90キロ級で優勝。同級で2008年北京パラリンピック出場を果たす。2010年には広州アジアパラ競技大会で金メダルを獲得した。2011年、株式会社ユニバーサルスタイルを設立、代表。現役を続けながら、日本パラリンピアンズ協会、日本視覚障害者柔道連盟の理事も務める。2017年、株式会社スタイル・エッジMEDICALの代表取締役に就任した。
株式会社スタイル・エッジ
株式会社スタイル・エッジMEDICAL
(構成・杉浦泰介)