二宮清純の視点
二宮清純が探る新たなるスポーツの地平線
2019.10.23
後編 enjoy our 2020!
~品川から"支え愛"を広げる~(後編)
二宮清純: 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を成功させるには、ボランティアの方たちの存在も非常に重要になってきます。
辻亜紀: 東京2020年大会における品川区独自のボランティアは「しな助」と言います。由来は助っ人です。2018年9月より募集を開始しました。現時点での主な活動内容は品川区主催のイベントをサポートしていただいています。オリンピック・パラリンピックに少しでも関わりたいという方もいるはずです。現在、個人では399人、団体は27(9月30日時点)の申し込みがありました。
伊藤数子(「挑戦者たち」編集長): 自治体が運営するボランティアで、団体の枠を設けているのは珍しいですね。
辻: 皆さん、人員であったり、物品であったりと、いろいろとご協力していただいています。品川区では「enjoy our 2020!」をテーマにしています。オリンピアン、パラリンピアン、組織委員会、行政、スポンサーだけが関わるのではなく、皆で盛り上がろうということです。区民が年齢も障がいも関係なく、すべての人が関わる。「楽しんだ者勝ち」という精神で取り組んでいます。
二宮: そういう一体感が品川には感じられますね。ところで品川を象徴するものはなんでしょう?
辻: まちがひとつになるのはお祭りですね。区内には多くの神社があります。そこでのお祭りに加え、戸越銀座などの商店街も活気があります。天王洲周辺の水辺は都会的な雰囲気や、その近くには昔からの宿場もあり、新旧が融合しています。
二宮: 「東京の南の玄関口」と言わるほど交通アクセスに優れていますよね。
辻: 今は羽田空港にもアクセスしやすくなりました。区民の皆さんには「すごく便利」とおっしゃっていただいています。
伊藤: 変わりつつある品川において、東京2020大会はひとつのターニングポイントになるかもしれませんね。
辻: ありがたいことに区民の皆様も「"おもてなし"を頑張ろう」と非常に盛り上がってくれています。
【2020年以降に繋がる活動】
二宮: 品川区は日本ブラインドサッカー協会とパートナーシップ協定を締結するなどパラスポーツも積極的に応援しています。区内の公共施設におけるユニバーサルデザインの進捗状況はいかがでしょうか?
辻: 東京2020大会の会場周辺を中心に道路や公衆便所などバリアフリーの整備を進めました。
伊藤: 東京2020大会の開催はインフラを整備する、ひとつのきっかけになりますよね。
辻: そうですね。ハード面の整備が追い付かない部分があれば、"おもてなし"の精神、皆で助け合うことで補っていきたいです。
二宮: 東京2020大会まで、あと1年を切りました。2020年以降の品川区としてのスポーツ事業計画は?
辻: スポーツは「する」「観る」「支える」の三本柱で成り立っています。いろいろなかたちでスポーツに関わり、地域づくりを進めていくのが一番だと思っています。品川区は再開発地区も多く、新たにまちに移ってきた方たちと旧来から住んでいる方たちの繋がりを深めるのはスポーツイベントだと感じています。
二宮: 品川区は"支え愛活動"という地域活動にも取り組んでいますよね。
辻: はい。隣近所の関わりは元々あるのですが、そうは言ってもひとり暮らしの高齢者の方々が、繋がりがなくなっていくと家の中にこもってしまいます。そこで"支え愛活動"を区で仕掛けました。身の回りのちょっとしたことで困っている方に手をさしのべる、地域の中での相互支援活動です。今年の5月に、コロンビアのボッチャ選手が来日した時に品川区内でイベントを行いました。お年寄りから小さい子まで一緒になって世界トップレベルの選手と競技を楽しむ。それはすごく良い雰囲気でした。オリンピック・パラリンピックを通じ、"支え愛活動"を広げ、共生社会実現へ加速していきたいと思っています。
(おわり)
<辻 亜紀(つじ・あき)>
品川区文化スポーツ振興部オリンピック・パラリンピック準備課長。1965年、東京都出身。1987年、慶應義塾大学法学部卒業、1989年5月に入区し、選挙管理委員会に配属。福祉部副参事(品川区社会福祉協議会派遣)を経て、2018年4月より現職。「enjoy our 2020!」を合言葉に、東京2020大会を区民・事業者とともに盛り上げていきたいと奮闘中。趣味は水泳とランニング。スキーとスキューバダイビングはインストラクターを務めたこともある。
(構成・杉浦泰介)